研究課題/領域番号 |
20K00406
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小宮山 真美子 長野工業高等専門学校, 一般科, 准教授 (30439509)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナサニエル・ホーソーン / マーク・トウェイン / 爵位権継承 / Claimant Narratives / Cartography / 19世紀アメリカ文学 |
研究実績の概要 |
本研究では“Claimant Narratives”の語りの特性と文学史での位置づけを見出すべく、ホーソーン、トウェイン作品のほか文学ジャンルを横断する形で、作品が内包する英米両方向からの「家系」および「所有」の問題を確認する。その上で、イギリスの伝統的な貴族制と、そこから離脱して誕生したアメリカ国家の民主主義の理想と現実が、イギリスの土地空間が絡んだ19世紀の物語を媒介としていかに描出されていたかについて明らかにすることを目的としている。 令和2年度は爵位権継承の物語の特性と、このジャンルの文学史での位置づけを探るべく、19世紀のアメリカで本テーマがどのように扱われたかを分析するために、先行研究の資料収集を行った。研究の実績としては、ナサニエル・ホーソーンの晩年の未完のロマンス『アメリカの相続者原稿』に収録された「エサレッジ」と『不老不死の霊薬原稿』に収録された「セプティミアス・フェルトン」の精読を行い、ふたつの作品間における空間の相続のテーマについて検討した。その際に、ホーソーンの旅行エッセイ『われらが故国』(1863)に記されたアメリカとイギリスという物理的な土地空間をつなぐ相続について、ホーソンの個人的な見解についても考慮に入れた。その結果、この晩年の作品間の背後には時空を超えた「土地空間の相続」というテーマの繋がりがあり、そのテーマはこれまでのホーソーン作品を貫くものとしても読めることがわかった。現在は本研究を英語論文にし、海外の学術誌への投稿準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、初年度は「19世紀アメリカ文学における爵位権継承の物語の特性と表象の分析」を行う予定であったが、以前から継続して研究を進めていたナサニエル・ホーソーンの晩年の未完の作品群における爵位および相続に関する論文を執筆することができた。また爵位権継承のナラティブにおける先行研究の資料収集もおおむね順調に進められた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はアンティベラム期とポストべラム期の爵位権継承の物語の特性を洗い直し、文学史上どのような位置づけができるかを考察する。また特に、マーク・トゥエイン、ヘンリー・ジェイムズが描いた英米間の爵位権継承の形式と特徴を検討し、これらの物語の登場人物の移動、相続のための序列、申し立ての仕方などについて概観し特質を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はコロナの拡大により、当初予定されていた学会参加および学会発表への参加ができなかっため旅費の支出が0円となった。次年度はイギリスへのフィールドワークを予定しているが、引き続き海外渡航が困難な場合は新たな対策を取る予定である。
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