研究課題/領域番号 |
20K00406
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小宮山 真美子 長野工業高等専門学校, 一般科, 准教授 (30439509)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 19世紀アメリカ文学 / 爵位権継承 / ナサニエル・ホーソーン / マーク・トウェイン / Claimant Narratives / Cartography |
研究実績の概要 |
本研究では“Claimant Narratives”の語りの特性と文学史での位置づけを見出すべく、ナサニエル・ホーソーン、マーク・トウェインの作品を中心に、文学ジャンルを横断する形で、作品が内包する英米両方向からの「家系」および「所有」の問題を確認する。その上で、イギリスの伝統的な貴族制と、そこから離脱して誕生したアメリカ国家の民主主義の理想と現実が、イギリスの土地空間が絡んだ19世紀の物語を媒介としていかに描出されていたかについて明らかにすることを目的としている。 令和3年度はナサニエル・ホーソーン作品に出現する「爵位権主張」、および「イギリス荘園またはアメリカ国内の土地所有権」について記されている箇所のテクスト分析を行った。特に、ホーソーンの晩年の未完の2作品『アメリカの相続者原稿』および『不老不死の霊薬原稿』の精読を通し、両作品間には遺産相続に関して密接な結びつきがあることを発見した。またこのテーマがホーソーンの初期の短編作品から断続的に出現し、晩年の未完の作品まで接続されているという文脈を見出すことができた。 マーク・トゥェインの『アメリカの爵位権主張者』およびそのほかの19世紀の作品については、精読および資料収集を行った。 また5月に開催された第39回日本ナサニエル・ホーソン協会全国大会のワークショップにて、「土地と死者」に関する口頭発表を行った。アメリカ植民地時代におけるインディアンの戦いを描いた作品にも、19世紀アメリカの土地所有の概念に関連する思想や懸念が描き込まれていることを分析し発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は主に「ナサニエル・ホーソーンとマーク・トゥエイン作品における語りの比較、亡霊の扱いについての分析」を行う予定であった。ホーソーン作品における亡霊(死者)に関する分析についてはできたが、トェイン作品の分析はまだ不十分である。加えて本年度は、ホーソーン作品の舞台となったスミシルズ・ホール(イギリス指定建造物1級)へ赴き、荘園屋敷の敷地や作品のテーマとなった「血糊の足跡」の資料調査などを行う予定であったが、コロナウィルスの世界的な蔓延により出国できなかったため断念した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はホーソーン作品の爵位権に関わる作品の総括を行う。またコロナの状況をみながら、2年目で実施できなかったスミシルズ・ホールへの現地調査も行いたい。その上で、19世紀の領土拡張期という視点を入れながら、開拓という労働作業を下支えとし空間を拡張していった19世紀アメリカが、なぜ世襲財産である荘園を相続するというヨーロッパ文化および政治システムに惹かれ、それを文学作品の中に取り入れたかについて分析してゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度はイギリスへ現地調査へ行く予定だったが、コロナ禍において出国ができず予定していた海外調査が実施できなかったため、海外出張旅費が使用できなかった。また国内学会もすべてリモートに切り替わったため、同様に旅費の使用ができなかった。
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