研究課題/領域番号 |
20K00414
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
滝川 睦 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90179573)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 近代初期英国演劇 / ホスピタリティー / シェイクスピア / キリスト教的仁愛 / コンダクト・リテラチャー / 社会的交渉 |
研究実績の概要 |
令和2年度に実施した研究の成果は、(1)近代初期英国演劇におけるホスピタリティー表象の変遷を、ホスピタリティー演劇の特徴のデータベース化を行うことによって解明した。(2)近代初期英国のコンダクト・リテラチャーにおけるホスピタリティー表象に関する分析を行った。その結果と(1)の分析結果との相関関係を解明した。分析の対象となった作品はJohn FitzherbertのBooke of Husbandrie(1523)、Thomas ElyotのThe Boke Named the Governour(1531)等である。(3)William ConwayのAn Exortacion to Charitie, Very Needefull at This Tyme(1551)等に表象されたキリスト教的仁愛・歓待の観念の精査および、(1)と(2)の分析によって析出された結果との照合を行い、近代初期英国におけるホスピタリティー概念の変遷を解明した。とくに上記の分析によってシェイクスピアの初期・中期喜劇における、ホスピタリティー概念を軸とする演劇的ダイナミクスを解明したことが最大の成果と言える。シェイクスピアのThe Comedy of Errors(1594)にしてもMuch Ado about Nothing(1598)にしても、異文化同士の社会的交渉が劇冒頭において表象されるが、その際この交渉と並行してなされるのがホスピタリティーの実践である。ホスピタリティー実践を行うのは、その語源が「主人」と「客」を同時に意味するhostである。必然的に劇中で実践されるホスピタリティーは相互交渉的であると同時に転覆的なものとなる。シェイクスピアの初期・中期喜劇における演劇的ダイナミクスはこの、重層的な意味をもつhostが実践する、ホスピタリティーを基軸にして生成されることを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記した「研究実施計画」にほぼ沿って、令和2年度の研究が行われたからである。海外出張や国内出張ができないことにより、英国図書館や他大学に所蔵されている一次・二次資料を計画した形で活用できていないこと、出版予定されていた研究書の出版が遅延されていることによって、研究の進捗状況に幾分か影響があった。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記した「補助事業期間中の研究実施計画」のスケジュールに従って、粛々と研究を進めていく。現在、海外出張や国内出張が不可能であることによって一次資料・二次資料に関する調査に支障が生じることが予想できるが、その支障がでた分をEarly English Books Online (EEBO)などの電子書籍等を最大限に活用することによって補填していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度交付申請書の「補助事業期間中の研究実施計画」に記した英国図書館、ロンドン大学付属図書館における資料調査・分析のための海外出張、東京大学付属図書館における資料調査・分析のための国内出張がコロナウィルス感染防止のために行えなかったこと、そして購入予定であった一次・二次資料の出版の遅延によって、次年度使用額が生じた。使用計画としては、コロナウィルス禍が収束し、海外出張や国内出張が可能になる段階をまって当初計画していた出張を行い、本研究に関する一次資料と二次資料の調査・研究を遂行する予定である。また遅延されていた研究書の出版をまってそれらを購入し、「研究計画調書」に記した令和3年度の研究において、積極的かつ計画的に活用する予定である。
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