研究期間を通じコロナ禍で国外調査が困難であったが、上智大学図書館が購入したEvans他のウェブ資料に助けられ、複数の論文をまとめることができた。一年間の研究延長が許可され、2023年8月30日~9月16日、NYとケンブリッジ(MA)に出張し、研究協力者と再会、交流の機会を得た。 NYではブルックリンに滞在調査した。ヘンリー・W・ビーチャーが牧師を務め、姉のH・B・ストウやM・トウェインが日曜礼拝に通ったプリマス教会を訪問した。日曜朝拝参加後、主任牧師、教会員より歴史背景の説明を受け展示場の見学調査を行った。会堂は19世紀の様式が保存され、リンカーンやF・ダグラスの着席した座席も残されている。「地下鉄道」の跡もあり、広大な敷地内に隠れ場を提供したことが確認できたという。 ブルックリン島周辺には複数の船着場があり、逃亡奴隷を乗せたボートが寄港場所を確保できた。立地上の好条件から、ブルックリン地区は、19世紀、奴隷逃亡ルート(「地下鉄道」)の駅となっていた。教会周辺にはリバティー島の検問所から到着した新移民たちの居住区があり、多様な移民グループが共存した。この地域では、プロテスタント系、カトリック系移民が対立ではなく融合の方向を取る傾向にあったのは、すでに逃れの場が準備されていたことと島の狭さが要因だったと思われる。 9月5日、NYからボストン=ケンブリッジに移動。ハーヴァード大学図書館でDavid D. Hall教授の援助により図書館用IDを取得し、資料調査に当たった。Joyce Chaplin、Orlando & Anita Patterson教授等ハーヴァード大学やボストン大学の研究者と再会し研究交流の機会を持つことができた。コロナの為、本プロジェクトは遅延したが、最終年に海外調査を入れることができたのが幸いだった。
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