研究課題/領域番号 |
20K00424
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研究機関 | 敬和学園大学 |
研究代表者 |
荒木 陽子 敬和学園大学, 人文学部, 教授 (90511543)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アフロメティ / アトランティックカナダ / ジョージ・エリオット・クラーク / マキシン・タインズ / ドロシー・ミルズ=プロクター |
研究実績の概要 |
2023年度は、10月の日本アメリカ文学会第62回全国大会における発表を目指して、春季に国内で資料を読み進め、夏季にカナダで必要な資料収集を行った。カナダでは主にトロント大学、マニトバ大学における図書資料収集を行った。加えて、カナダでは8月は解放月間(Emancipation Month)という好機であり、トロント近郊の博物館が連携して奴隷解放、とくに「地下鉄道」関連の展示を行っており、貴重な情報を得ることができた。筆者は特にアフリカ系と先住民系の混血、アフロメティ(ブラック・インディアン、ブラック・インディジェナスなど)のパブリック・リプリゼンテーションの在り方に着目して、オンタリオ、マニトバ、そしてサスカチュワン州において博物館等を現地調査したが、ジョージ・エリオット・クラークの問題意識とたがわず、カナダの公的表象には、特にマニトバ以西においては、白人と先住民の混血(メティ)の存在を強く意識し、その展示を行う傾向があるものの、その他の地域も含め、アフリカ系と先住民の混血の存在についてはほとんど意識されておらず、博物館等の来訪者には情報の提供が行われていないことが分かった。 10月の日本アメリカ文学会では収集した資料や情報を利用して、「G.E. Clarkeの『アフリケーディア』を超えて――Maxine Tynesの『つながる、ひろがる』詩」と題して、研究発表を行い、研究者からのコメントをいただくことができた。23年度末は2024年5月のアトランティックカナダ研究学会(於・メイン大学)における発表を目指し、マリタイムス出身であまり取り上げられることのなかったアフロメティジャーナリスト、ドロシー・ミルズ=プロクターの自伝・回顧録の研究を行った(2024年5月10日発表済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ災禍、2020年出産、2022年長年自宅介護だった父の死を経て、特に実際に国際間の移動が必要となる研究・交流が若干遅れている。22年、23年度の研究で大方取り戻せたものの、海外からの研究者・作家の招聘が2024年度に間に合わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は本来ならば研究の最終年度で、海外から作家ないしは研究者を招聘して、公開イベント等を行い、研究成果の共有を図る予定であったが、その部分は年度末に延長申請を行い2025年度に行う予定とし、2024年度中に調整を行う。 2024年度は2023年までの研究成果、特に学会発表を済ませた原稿を論文化し、紀要・学会誌等に発表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始から2022年度まで海外への移動を伴う研究活動が、感染症対策等のため難しかった。そのため、研究計画を予定通り進めることができず、予算を使用できなかった。2024年度夏以降に1990年代のカナダ沿海諸州のアフリカ系作家の活動状況の生き証人である、カナダ在住の研究者(リチャード・レムやレスリー・チョイス等、当時アフリカ系作家の作品を出版していたポッターズフィールド・プレス関係者)のインタビューを行うとともに、2025年度に研究期間を延長して、海外講師の招聘を伴う成果発表のイベントを企画する予定である。現時点では、2025年には作家・研究者ジョージ・エリオット・クラーク(トロント大学)ないしはデイヴィッド・クリールマン(ニューブランズウィック大学)を招聘し、公開講演会等を企画することを考えている。
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