研究課題/領域番号 |
20K00425
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研究機関 | 名古屋経済大学 |
研究代表者 |
川津 雅江 名古屋経済大学, 法学部, 名誉教授 (30278387)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 性教育 / ジェンダー / セクシュアリティ / 身体 / 健康 / 英文学 / 女性作家 / 医学的言説 |
研究実績の概要 |
本年度は、当初の計画では研究の最終年度だったため、過去2年間のコロナ禍に起因する研究の遅延を解消すべく努力したが、以下の実績を挙げるにとどまった。 (1)本研究を推進するのに必要な医学・教育関係の著書や論文を国内で購入もしくは相互貸借制度を利用して収集するとともに、コロナによる制限が緩和されたため、国内で入手が困難な資料をイギリスの図書館で収集し、それらの資料を分析・解読したものをデータベース化し、考察の作業を容易にした。 (2)研究成果の一部を共著の形で公表した。『十八世紀イギリス文学研究(第7号):変貌する言語・文化・世界』(開拓社、2022年7月)所収の「動物のナチュラル・ヒストリーと教育:シャーロット・スミスの『詩を紹介する会話』」では、スミスの作品を中心に、動物のナチュラル・ヒストリーが子どもに与える教育的効果を探った。『感受性とジェンダー:<共感>の文化と近現代ヨーロッパ』(水声社、2023年3月)所収の「愛情の偽装:『娘たちへの父親の遺産』とウルストンクラフト」では、ジョン・グレゴリーの人口に膾炙したコンダクトブック(1774)をウルストンクラフトの批判的視点から考察し、未婚女性に対する保守的な純潔教育の真髄を明らかにした。『オースティンとエリオット:<深淵なる関係>の謎をさぐる』(春風社、2023年3月)所収の「女性の教育と生活の資:オースティンとエリオットにおけるウルストンクラフトの遺産」では、ジェイン・オースティンの『エマ』とジョージ・エリオットの『ミドルマーチ』を中心に、ウルストンクラフトの女性教育論の影響の跡を辿った。その他、日本ヴィクトリア朝文化研究学会 第22回全国大会シンポジウム2 「ヴィクトリア朝イギリスの家族:周縁的家族と<親子分離>」で、コメンテーターとして、「文学における親子離隔の表象」を口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍での海外渡航制限が緩和された上、9月には帰国の際のワクチン接種証明書の提示が簡素化されたので、やっと渡英し、ブリティッシュ・ライブラリーとウエルカム・ライブラリーで調査することができたが、まだ必要な資料が十分に収集できていない。またサブテーマ(B)現代的な性教育の萌芽の考察はほぼ終わったが、サブテーマ(C)性教育の隠された展開の考察は一部しか進んでいない。以上の理由で、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では2022年度が最終年度だったが、延長願いが認められたため、最終年度にあたる2023年度の研究推進方策は、以下の3点である。 (1) まだ不足している資料を国内外で収集し、それらを分析・解読しするとともに、データベース化して、研究作業を容易にする。 (2) サブテーマ (c)性教育の隠された展開の考察を完遂して、本研究の総括を目指す。特に、エラスムス・ダーウインの『植物園』を女性作家たちの反応と比較しながら考察し、植物学が果たした性教育のありかたを探る。 (3) 研究成果は、学会発表、学術誌への投稿論文、共著などの形で、随時公表するとともに、刊行物の出版準備をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、英米ではコロナによる規制が解除され、日本でも海外渡航制限の緩和などがあったが、国内の学会ではまだオンライン開催が主流であり、夏以降ハイブリッド開催となった学会でも、感染不安からオンラインで参加したため、国内旅費の消費がまったくなかった。そのため次年度使用額が生じた。2023年度は、研究費全体のうち、身体教育・医学関連の書籍の物品費として10,000円をあてる。 国内外の学会発表や資料収集・調査のための旅費としては、550,000円をあてる。また、謝金(英文校閲)として、10,000円、その他の支出(論文印刷費、複写費、相互貸借文献複写費、送料)として、45,666円を使用する予定である。
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