研究課題/領域番号 |
20K00429
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
宮原 一成 関西学院大学, 教育学部, 教授 (10243875)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 英語文学教材化 / 医学教育と文学 / 教員養成 |
研究実績の概要 |
本研究は、英語文学作品を、大学生向けあるいは中学校・高等学校向けの語学教育の教材としてではなく、教師になることを目指す学生向けの教員養成課程教材として活用する方策および方法論を探る基礎研究である。初年度にあたる今年度は、英語文学のさまざまな「読み」の実践例を広く渉猟しながら、語学教育とは異なる場たとえば生徒指導における生徒の家庭環境の把握や教室運営などの場に応用可能な「読み」を拾い上げる研究活動を、現在のコロナ禍下でできる限り展開した。 くわえて、本研究にインスピレーションを与えてくれた、医学教育領域での文学教材活用の実態とその歴史的背景の研究も進めた。こちらはある程度満足のできる成果を挙げられたと感じている。 この二つを融合する形で、今年度は研究論文を1本公刊した。「教員養成教材としての英語文学―序にかえて、ジョイスの「下宿屋」を読む」(『教育学論究』第12号 [2020]、127-136ページ)がそれである。論文の前半部では、英米の医療者養成課程において人文学なかんずく文学作品の利用が重視されるようになった経緯と現在までの評価をたどり、そして、我が国における文学作品の教員養成課程への導入実践の数少ない例を紹介した。そのうえで、アイルランド人作家ジェイムズ・ジョイスの短編小説を取り上げ、世間からも物語の読者からも自堕落な女性と見なされている若い登場人物について、さまざまな先入観の網をくぐり抜けてその家族間関係の隠された深部を読み取る実践を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルス蔓延の影響が相当に大きかった。調査旅行や学会出張はすべて計画中止とせざるを得なかった。また、勤務する大学でも、オンライン授業への移行や準備に多大な時間を費やさざるを得ず、いきおい研究のための時間を犠牲にして削減せざるを得なかった。成果物である公刊論文にも、結局のところ英語文学の事例研究を1点しか盛り込めていない。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルス感染拡大に歯止めがかかってくれることを期待するしかないのだが、もし状況が落ち着けば、文学研究や文体論研究の学会に積極的に参加することで、文学読解の新しい実践例を吸収し、自分なりの実践の妥当性を批評にさらすことを進めていきたいと考えている。 また、当初の研究実施計画に書いていたとおり、医学教育に文学を活用することにおいて先進的実践を行ってきた英国あるいは米国の大学の教育の実際を視察する計画も抱いていたが、可能性を再度検討したいと考えている。 もしそれがかなわない場合でも、勤務校における授業能率を上げるなどの方策をとることにより、研究時間を確保して、より多くの英語文学作品について成果を上げるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会出張や調査旅行が全くできず、旅費の使用額がゼロだった。 次年度には旅費を利用して積極的に文献渉猟の調査旅行や学会参加、場合によっては視察を実施する予定である。
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