研究課題/領域番号 |
20K00435
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石原 剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00368185)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 飛行文学 / アメリカ文学 / 航空映画 / チャールズ・リンドバーグ / ハワード・ホークス / 移動 / 旅行記 / 飛行機 |
研究実績の概要 |
2020年度は、アメリカの飛行家、チャールズ・リンドバーグが1953年に著したピューリッツァー賞受賞作、『ザ・スピリット・オブ・セイントルイス』に関する研究成果を「翼の福音、それとも呪われた狂気――リンドバーグと飛行の物語」としてまとめ、下河辺美知子編『マニフェスト・デスティニーの時空間』(小鳥遊書房、2020年)所収の研究論文として発表した。同論文では、『ザ・スピリット・オブ・セイントルイス』を仔細に分析し、そこに織り込まれた飛行を巡る様々なアメリカの物語がはらむ文化的意味について検討した。特に人類初のニューヨーク・パリ間無着陸横断飛行の達成に至るまでの経験を綴った同書には、そう遠くない昔に「西部」という地上のフロンティアを失ってしまったアメリカが、二十世紀の新たなフロンティアを「空」に見出さんとした際の夢と矛盾が刻み込まれていることを明らかにした。加えて、飛行機によって新たな時代を切り開きながら、皮肉にもその新たな時代の矛盾の体現者ともなったリンドバーグの姿を見極めるべく、マニフェスト・デスティニーとアメリカにおける航空の発展の関係をも念頭におきながら、この二十世紀前半のアメリカ最大のヒーローの文化的意味について考察した。 2020年度後半は戦間期のハリウッドにおける航空映画の調査研究を実施した。特に、第1回アカデミー賞最優秀作品賞に輝いたウィリアム・ウェルマン監督の航空映画『つばさ』(Wings)(1927年)、また航空界、映画界の異端児であるハワード・ヒューズ監督の『地獄の天使』(Hell's Angels)(1930年)、巨匠ハワード・ホークス監督の『暁の偵察』(Dawn Patrol)(1930年)の分析を同時代のアメリカにおける飛行機熱と関係を視野に入れつつ分析した。その成果は2021年度に研究論文としてまとめる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、アメリカでの資料収集を実施することは出来なかったが、その代わり、オンライン書店などを活用して戦間期の航空映画の資料を重点的に進めることができた。その他、研究書の一章として出版が予定されていたリンドバーグの飛行文学に関する成果も編者の努力のお陰もあって無事刊行され、全体の研究の進展状況には概ね満足している。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍はしばらく継続することが予想されるので、2021年度は現在入手可能な資料の範囲で研究を進める予定である。特に、2020年度後半に集中的に手掛けてきた戦間期の航空映画研究は2021年度の夏までに成果をまとめ、研究書の一部として刊行する予定である。その他、アン・モロウ・リンドバーグ、アーネスト・ギャンの飛行文学に関しては資料収集もほぼ完了しており、他のアメリカ飛行文学に関する資料収集が進まない場合でも、両飛行文学者の研究を進めることは一定程度可能であると考えられる。ただし、アメリカ飛行文学をより網羅的に把握するには、アメリカでの資料収集が不可欠であり、コロナ禍が収束次第、現地での資料収集を実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため学会発表や資料収集の為の旅費の支出が全く発生しなかったため。
|