研究課題/領域番号 |
20K00435
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石原 剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00368185)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 航空映画 / ハリウッド / 日米比較 / 航空文学 / 気球 / 飛行文学 |
研究実績の概要 |
2023年度は、22年度中から研究を進めていた19世紀のアメリカにおける気球をめぐる言説の分析を継続して進めた。特に、気球飛行士John Wiseの自伝や、作家Edgar Allan Poeが新聞に発表した大西洋気球飛行のホークス(人担ぎ)記事“Balloon Hoax”(1844年)に注目し、19世紀のアメリカ人の心をとらえた気球による大西洋横断飛行と西漸運動の関係を特にナショナリズムとの観点から考察した成果を論文として出版すべく、年度の前半は執筆を進めた。また年度後半は、日米比較文化研究の観点から、戦後のアメリカ航空映画の代表作である『Top Gun』(1986年)の日本版リメイクといえる『Best Guy』(1990年)の分析を進めるべく、同作の映画パンフレットや映画雑誌による映画評、また1980年代のナショナリズムやMTVを中心と音楽文化と『Top Gun』の関係に関する研究、映画に対する自衛隊の協力を跡付ける資料などの収集を進めた。特に、邦画『Best Guy』に関しては、ほぼ20年ぶりに本格化した自衛隊協力映画の先鞭をつける作品であり、同時代の日本における自衛隊イメージと自衛隊のPR戦略の転換などと関連付けて論じる必要があり、航空自衛隊が発刊している雑誌や防衛庁(当時)による映画協力に関する文書なども検討すべく、資料収集を実施した。また、同作の監督で戦後アクション映画の代表者ともいえる村川透の映画制作の特徴を解明すべく、同監督の作品や関連するインタビュー資料などの収集も適宜実施した。資料の収集はほぼ23年度中に終えることができたので、『Top Gun』と『Best Guy』の比較論に関しては、24年度中での北米での国際大会での発表と英語論文の準備を中心に進め、英語論文は全体のほぼ3割ほどの草稿を年度内に書き進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年中に、19世紀のアメリカにおける気球をめぐる言説の分析に関する論考を論文として発表したかったが、多忙を極める本務校業務や学会業務、また所属する学会が発行する英文号の編集に加え、依頼された他の研究企画の実現のために多くの時間を割く必要があり、当初予定していたほどの研究の進展を実現することが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
日米比較文化の観点からの航空映画研究の論考は24年度中に北米の国際学会で発表予定である。同テーマの英語論文の執筆に関しても24年度4月の現時点でほぼん半分程度まで進んでおり、まずは年度前半に同論文を仕上げることを目指したい。加えて、23年度に論文草稿を完成した19世紀のアメリカにおける気球をめぐる言説分析に関する論文を学術雑誌に出版する予定である。さらに、24年度後半には、戦後アメリカ航空文学の旗手であるErnest Gannの代表作の分析を素地となる作品の精読と関連資料の収集を進め、できるだけ早い段階での論文としての出版を実現したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本務校業務と学会業務が多忙を極めてしまったため、予定していた旅費の支出を計上することが出来なかったため、23年度における予算の執行が当初の計画より絞られてしまった。24年度は順調にいけば国際学会での発表が控えており、計画通りの執行を実施する予定である。
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