研究課題/領域番号 |
20K00440
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高野 泰志 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (50347192)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 侵略文学 / SF映画 / アメリカ文学 |
研究実績の概要 |
本研究課題は19世紀末から20世紀にかけてアメリカで無数に作られた侵略ナラティブを研究し、それらのナラティブが現代アメリカ主流文学に与えた影響を探る試みである。 初年度にあたる2020年度には、アメリカの国立公文書館において冷戦期の政府関係資料を収集、調査し、アメリカの侵略ナラティブの全体像を把握することが目的であったが、コロナ禍のためにアメリカ渡航が事実上不可能になり、研究の進捗は大きく遅れている。結果的に2020年度は国内で入手可能な文献を可能な限り収集し、隣接研究領域の研究者とオンラインやメールを通じて意見交換をすることで、2021年度以降の研究の準備段階とすることにした。 また日本国内で入手できる文献はそれほど多くないので、2021年度以降で研究する予定であった主流文学をテーマを広げて研究することによって、現地調査後の本格的な研究が比較的容易に進められるよう下準備をした。 上記のような事情のため、実質的な研究成果の公表などはほとんど不可能であったが、コロナ禍終息後の研究がある程度効率的に進められる準備はできたのではないかと考えている。 2020年度の研究成果として挙げられるのは2021年3月21日にオンライン開催された第9回痛みの研究会において、フランク・ノリスの『マクティーグ』に関する講演を行ったことである。本講演は侵略ナラティブと直接的に結びつくものではないが、19世紀末に書かれた作品の痛みの表象と本研究課題は非常に密接な関係があり、2021年度以降の研究に重要な役割を帯びている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍のために初年度の研究の主要目的であったアメリカ渡航と現地調査が不可能になったことが大きな理由である。日本国内で可能な限りの研究は行ったが、そもそも3年間の研究課題の最も基本的な資料収集ができなかったために、どうしても進められる内容に限界があった。
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今後の研究の推進方策 |
いまだコロナ禍が続いているため、事態が落ち着くまでは2020年度と同様に国内で可能な限りの研究を続ける予定である。具体的には現代アメリカ文学における侵略ナラティブの影響のある可能性のある領域を予測を立てながら研究し、本格的な研究が始まった段階で効率的に進められるように下準備をすることになる。扱う作家としては19世紀末から20世紀初頭の主流文学であるヘンリー・ジェイムズとイーディス・ウォートン(どちらもこれまで侵略ナラティブとは無関係とされてきた作家であり、事実上この角度からの研究は全くされてこなかった作家である)の作品にみられる侵略ナラティブの影響を探るとともに、ポスト911時代の現代アメリカ文学の中からトマス・ピンチョンを研究する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、海外渡航および現地調査ができなかったため、旅費に宛てていた研究費の使用が不可能になったため。また現地調査で使う予定であった物品なども、確実に必要とわかるもの以外、万が一不要になる可能性を考えて購入を避けた。 今後はコロナ禍が終息次第、当初2020年度に執行予定であった物品購入及び現地調査での使用を行う予定である。コロナ禍終息までは2020年度と同様に慎重に吟味した上で必要とみなしたもののみの予算執行に制限する予定である。
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