コロナ禍のために海外渡航が制限され、計画通りにはいかなかったが、研究計画を柔軟に変更し、国内の研究者と連携することによって可能な限り研究課題の遂行に努めた。 2020年度にはアメリカの国立国会図書館での資料収集がコロナ禍による渡航制限のために事実上不可能になり、日本国内での文献収集とその資料の分析にあてた。その成果の一端としてはオンライン開催された第9回痛みの研究会において、フランク・ノリスの『マクティーグ』に関する講演を行った。 2021年度には5月に九州アメリカ文学会の「イーディス・ウォートン再読―生誕160年を控えて」と題されたシンポジウムにおいて、『トワイライト・スリープ』と痛みの表象」という研究発表をおこなった。10月には日本アメリカ文学会全国大会においてシンポジウム「動物との「交わり」―アメリカ文学・映画における人間と動物の境界」に参加し、「『猿の惑星』の進化と獣姦」というタイトルで発表を行った。また、論文としては『アメリカ研究』第56号に「比喩との抗い---ジャック・ロンドンの癩病表象」という論文を発表した。これは病と侵略ナラティブの関係を論じた本研究課題の中心的研究結果である。共著書としては日本ヘミングウェイ協会編の『ヘミングウェイ批評---新世紀の羅針盤』『ヘミングウェイ批評---三〇年の航跡』という2冊の著書を出版した。 2022年度には5月に日本英文学会全国大会の「アメリカ文学と植物表象」と題されたシンポジウムにおいて、「イーディス・ウォートンの植物的想像力」という研究発表をおこなった。 2023年度にはこれらの研究成果をまとめ、著書の形で公表できるよう準備を進めた。 コロナ禍による影響のために1年研究期間を延長するなど、大きな困難に見舞われたが、結果的には研究課題の修正を迫られながらも、大きな成果を上げることができたと考えている。
|