最終年度は「ソローとトウェイン ―口承文学の系譜」(『ヘンリー・ソロー研究論集』49号、66-74、2024年1月)を出版し、「思想家を通してメルヴィルを語る―スパノス、アガンベン、『ビリー・バッド』」(日本メルヴィル学会年次大会、2023年9月)、そして、「終末論としての“Billy Budd”」(九州アメリカ文学会9月例会、2023年9月)を口頭にて発表した。いずれもメルヴィル『クラレル』研究から生まれた、アメリカ史を貫くキリスト教的終末論やそれと強く関わるアメリカ例外主義についての考察が生かされている。研究機関全体を通じては、さらに「 「ラパチーニの娘」における思考と情念ーダークエコロジーを参照点として」(人文科学論集90号、45 - 56、2023年2月)において、ホーソーン的な終末観とそこに中途半端に配置されたノンヒューマン的キャラクターたちの運命について考察した。「メルヴィル小説におけるミレニアリズムと労働」(Sky-Hawk10号、5 - 21、2022年12月)では、本研究の底流となるアメリカ史におけるミレニアリズムの影響力とそれに対するメルヴィルの応答について分析した。その他、関係する研究成果としては、「ミレニアリズム的資本主義と人種問題 ―メルヴィル文学を通したウェーバー批判」(日本ナサニエル・ホーソーン協会 第 40 回全国大会シンポジウム「アメリカン・ルネサンスと白人至上主義の構築」 2022年5月招待発表)、シンポジア「Labor Diaspora/ Labor Mobility---アメリカ文学における移動と労働」( 日本英文学会第93回大会、2021年5月)などがある。
|