研究課題/領域番号 |
20K00453
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
橋本 健広 中央大学, 国際情報学部, 教授 (70566546)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多文化共生 / イギリス・ロマン派 / 影響 / ペルシア文学 / 類似性 |
研究実績の概要 |
本研究は、データ可視化あるいは語彙の出現頻度といった量的分析を用いて、19世紀イギリス詩・演劇作品にみられる他の時代・文化圏に属する作品の取り入れを、詩の持続可能性と多文化共生という観点から考察し、フランス革命やグローバル化といった変容する時代に特有と思われる文学的傾向を模索するものである。 2020年度は詩の持続可能性の研究を行ったため、2021年度は、多文化共生の観点からの研究を行った。具体的には、ペルシア文学のイギリス・ロマン派詩人の詩への影響である。ペルシア文学のイギリス文学への影響を考察した研究書を読解し、『東方全書』、イナーヤトッラーの『バハール・ダーニシュ』といった19世紀のイギリス文学に影響を与えたペルシア語文献を主体に、サウジーの『タラバ、悪を滅ぼす者』やトマス・ムアの諸作品といったロマン派詩人の作品との類似性について分析を行っている。 現在は読解を中心に類似性の分析の可能性を探っている段階である。分析を行うためには対象データの特徴の理解が前提となる。このため、テキストを読み込むとともに、有効な影響の測定方法を調べている。同時に、コンピュータ上で比較を行うことができるよう、テキストの前処理を行っているところである。 現在の研究は、人文学研究における、質的データを量的データに転換する手法、および質的な分析に量的な分析を取り入れる手法の確立に意義があり、新しい試みとして広く他の同様の影響研究に適用できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると評価できる。交付申請書における研究計画は、令和3(2021)年度の研究は、中東趣味の流入、すなわち多文化共生について研究を行うことであった。計画では、イギリス・ロマン派のテキストとして、サウジーの『タラバ、悪を滅ぼす者』に代表されるロマン派の諸作品を用い、中東趣味を示すテキストとして、バルテレミ・デルブロのイスラーム百科事典『東方全書』(1697)等を用い、両者の関連性を調べることであった。 現在、イギリス文学におけるペルシア文学の影響の研究書を踏まえたうえで、サウジーの『タラバ、悪を滅ぼす者』およびトマス・ムアの諸作品と、『東方全書』および当時のイギリス文学に影響を与えたとされるイナーヤトッラーの『バハール・ダーニシュ』を読解し、関連性を調べるための手段を考えているところである。 ひとつの問題点は、『東方全書』がフランス語であるため、語彙をそのまま英語のテキストに利用できるかどうか不明という点が生じた。この点も交え、類似性の比較の手段について検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、中東趣味の流入を検討するための手段を決定し、テキストを準備して、比較を行うことである。トマス・ムアにみられる、『バハール・ダーニシュ』、および『東方全書』の影響の比較を中心に行いたい。 また余裕があれば、比較元の対象を広げ、ワーズワス、ドレイトン、テニソン等を検討の対象としたい。特に、ワーズワスとコールリッジの詩的対話について、マグヌーソン等の読解研究をもとに、量的計算を使用した場合の詩的対話の可視化の可能性を探りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナの影響もあり、海外に出張する機会を得られなかった。このため、2021年度の使用額は書籍の購入に充て、購入した書籍の読解を進めているところである。次年度使用額については、引き続き必要な研究書や1次資料の購入、またオンライン上で開催される学会の参加費等に充当したい。
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