研究課題/領域番号 |
20K00456
|
研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
戸田 由紀子 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (40367636)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | Mark Sakamoto / Forgiveness / POW / カナダ文学 / アジア太平洋戦争 |
研究実績の概要 |
21世紀に入り、アジア太平洋戦争における日本の植民地主義に対する複雑な関係性を描いた英語文学作品が欧米やアジア諸国で次々と出版されている。それらの作品は、特定の民族の立場から支配権力側を糾弾していないため、実際の抑圧されてきた歴史や今もなお続いている不平等を軽視しているという批判が出ている。しかし本研究は、それらが、被抑圧者と抑圧者の双方の視点の間から新たな認識を提示する新しいタイプの英語戦争文学と言えるのではないかということに着目する。それを検証するために、本研究は、カナダ、シンガポール、マレーシア、 イギリスの「新しいタイプ」の英語戦争文学を取り上げ、日本の東南アジア占領とその記憶がどのように「再構築」されているか、その物語や語りの技法と構造を分析し、従来の糾弾型戦争文学と比較して、被抑圧者と抑圧者の関係性がどのように表現されているか、それによってどのような政治的主張が表現されているかを明らかにする。当該年度は、日本の占領/植民地支配を描いたカナダの英語戦争文学を分析した。香港の戦いやカナダ兵日本軍捕虜に関連するカナダ史の先行研究(Dancocks 1983, Lindsay 1978, Palmer 2005など)を踏まえた上で、Mark SakamotoのForgiveness: A Gift from My Grandparents (2015)が日本の占領とその記憶をどのように「再構築」しているか、その物語の技法と構造を分析し、どのような被抑圧者/抑圧者の関係性と政治的主張が表現されているか考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定通り当該年度は日本の占領/植民地支配を描いたカナダの英語戦争文学を分析した。Forgivenessの中で、戦時中日本の捕虜収容されていた新潟や直江津の捕虜収容所の現地調査および資料収集を行うことはできた。しかしその一方で、8月に予定していたカナダや香港での現地調査がコロナで行くことができず、日本軍の戦争捕虜の手紙など第一次資料などの資料収集を行うことができなかった。海外出張が可能となった時点で調査を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
日本の戦争捕虜施設関連の資料をまとめ、従来型の作品である Kenneth CambonのGuest of Hirohito(1990)と比較考察しながら、前年度から行ってきたMark SakamotoのForgiveness: A Gift from My Grandparents (2015)が日本の占領とその記憶をどのように「再構築」しているかを考察した研究成果を論文として発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
日本軍の戦争捕虜の手紙など第一次資料が多数貯蔵されているCanadian War Museumや香港の捕虜施設の調査、作品内に登場する日系収容関係の史跡調査を行う予定であったカナダ出張が、コロナのために中止となったため。
|