研究課題/領域番号 |
20K00456
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
戸田 由紀子 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (40367636)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マーク・サカモト / 第二次世界大戦 / 戦争捕虜 / 日系カナダ人 / 強制移動・労働 / カナダ / 和解 |
研究実績の概要 |
21世紀に入り、アジア太平洋戦争における日本の植民地主義を描いた英語文学作品が欧米やアジア諸国で次々と出版されている。本研究は、それらが、和解と融和の可能性を探求する新しいタイプの英語戦争文学と言えるのではないかということに着目する。本研究の目的は、それを検証するために、カナダ、シンガポール、マレーシア、 イギリスの「新しいタイプ」の英語戦争文学を取り上げ、日本の東南アジア占領とその記憶がどのように「再構築」されているか、その物語や語りの技法と構造を分析し、従来の糾弾型戦争文学と比較して、被抑圧者と抑圧者の関係性がどのように表現されているか、それによってどのような政治的主張が表現されているかを考察することである。 当該年度は、カナダ作家マーク・サカモトの作品において、日本のアジア太平洋戦争における日本の植民地主義がどのように描かれているかを考察した。研究成果は、"Journey of Forgiveness--Mark Sakamoto’s Forgiveness: A Gift from my Grandparents”と題した論考として『椙山女学園大学研究論集』第53号に掲載した。 本論では、日本の戦争捕虜施設関連の資料をまとめ、 Kenneth CambonのGuest of Hirohito(1990)を始めとした抑圧された立場から戦争を捉えた従来型の戦争体験記や戦争文学を踏まえた上で、Forgiveness: A Gift from my Fatherが、第二次世界大戦時に日本軍の戦争捕虜であった祖父の体験と同時に、強制移動・労働させられた日系カナダ人の祖母の体験を綴ることで、被害者と加害者のパラダイムという二項対立の枠組みを解体していることを指摘し、そうすることによって新しい認識と和解の可能性を提示した作品であること論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度予定していたマーク・サカモトの作品分析を行い、研究成果を、"Journey of Forgiveness--Mark Sakamoto’s Forgiveness: A Gift from my Grandparents”と題した論考として『椙山女学園大学研究論集』第53号に掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はマレーシア作家Tan Twan EngのThe Gift of Rain(2007)とGarden of Evening Mists(2012)が、日本のマレーシア占領とその記憶がどのように描かれているかを考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にあり、国際学会での発表および海外調査や打ち合わせを行うことができなかったため。
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