研究課題/領域番号 |
20K00456
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
戸田 由紀子 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (40367636)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | タン・トゥアンエン / 戦争の記憶 / アジア太平洋戦争 / 和解 / マレーシア |
研究実績の概要 |
21世紀に入り、アジア太平洋戦争における日本の植民地主義を描いた英語文学作品が欧米やアジア諸国で次々と出版されている。本研究は、それらが、和解と融和の可能性を探求する新しいタイプの英語戦争文学と言えるのではないかということに着目する。本研究の目的は、それを検証するために、カナダ、シンガポール、マレーシア、 イギリスの「新しいタイプ」の英語戦争文学を取り上げ、日本の東南アジア占領とその記憶がどのように「再構築」されているか、その物語や語りの技法と構造を分析し、従来の糾弾型戦争文学と比較して、被抑圧者と抑圧者の関係性がどのように表現されているか、それによってどのような政治的主張が表現されているかを考察することである。 当該年度は、日本の占領/植民地支配について描いたマレーシアの英語戦争文学を分析した。日本軍によるマレーシア占領に関する一次資料(The Perek Times, Penang Shinbun)や主な先行研究(Kratoska 1998, Gin 1999, 明石 2001など)で歴史的背景を押さえ、従来の糾弾型の作品であるChin Kee OnnのMalaya Upside Down(1946)とSilent Army(1953)およびSybil Kathigasuの No Dram of Mercyを踏まえた上で、マレーシア作家タン・トゥアンエンの作品において、日本のマレーシア占領とその記憶がどのように描かれているかを考察した。タン・トゥアンエンの The Garden of Evening Mists に関する論考では、この作品において、日本の伝統文化とその美学が,戦争の「加害者」と「被害者」の 複雑な関係性を描きながら,両者間の融和と和解を提示するための戦略として用いられていることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度予定していたタン・トゥアンエンの作品分析を行い、研究成果を、「タン・トゥアンエンの『夕霧の庭』における戦争の記憶ー和解を探る美化の戦略ー」と題した論考として『椙山女学園大学研究論集』第54号に掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、日本の占領/植民地支配を描いたシンガポールの英語戦争文学を分析する予定である。シンガポール占領時代の動向を把握するための調査(史跡視察)および資料収集を行った上で、Warran Kalasegaranの Lieutenant Kurosawa’s Errand(2016)が提示する新たな視点と政治的主張について、従来の糾弾型の作品であるLim Thean SooのSouthward Lies the Fortress (1971)と比較しながら考察したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外での調査が校務と重なり延期になったため。
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