研究課題/領域番号 |
20K00458
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
中西 佳世子 京都産業大学, 文化学部, 教授 (10524514)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナサニエル・ホーソーン / 『アフリカ巡航日誌』 / 海軍艦上劇 / ミンストレル / マシュー・C・ペリー / 笑いの構造 |
研究実績の概要 |
本研究はミンストレルが内包する差別的な笑いの構造とその海外進出における文化的戦略との関係を考察しようとするものである。ホーソーンが編纂した『アフリカ巡航日誌』はマシュー・C・ペリーのアフリカ艦隊の記録であるが、その艦上劇としてミンストレル・ショーが度々演じられており、また日本開国の際にペリーが日本の役人を艦上に招いて披露したのもミンストレル・ショーであった。しかし、そうした実際に演じられたショーだけでなく、『アフリカ巡航記』のテクストにはそのアフリカ表象を通してミンストレル的な「ユーモア」が随所にみられる。そこで『アフリカ巡航記』の翻訳、ミンストレルに関する資料の収集、現実と虚構を交錯させる作家の手法について研究を進めた。具体的には以下のとおりである。
1)『アフリカ巡航日誌』の翻訳。高尾直知氏(中央大学)と大野美砂氏(海洋大学)と研究会をオンラインで定期的に開催し、翻訳の精度を上げるとともに、注と解題に取り掛り、翻訳出版の準備を進めてきた。 2)ミンストレルに関する論文、研究書を収集し、読み込みを始めた。 3)『テクストと戯れる』(松籟社2021年3月)収録論文「ホーソーンの「幽霊」目撃体験と創作-「ハリス博士の幽霊」」を発刊。ここでは初期ホーソーン作品における作家の創作手法の試みを考察した。実体験と想像を交錯させるその手法は『アフリカ巡航日誌』において、海軍士官の記録にフィクション性を加える編纂の手法にも見られるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大により、国内外調査、また学会出張が不可となり、予定していた出張調査を行うことができませんでした。
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今後の研究の推進方策 |
まずは参考文献の読み込みと作品分析に注力し、学会参加、発表を通して研究テーマに関する知見を得るが、遅れている出張調査についても状況に応じて実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大により、予定していた国内外調査、また学会出張が不可となり、旅費等を執行することができませんでした。 従いまして、次年度使用額は今年度未使用額457917円と次年度請求額500000円で合計約950000円となります。内訳は以下のとおりです。旅費500000円(国内2回、海外1回)、物品150000円、謝金・人件費150000円、その他150000円
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備考 |
2021年1月23日号『図書新聞』書評掲載 書評対象書籍:高尾直知著『〈嘆き〉はホーソーンに良く似合う』(中央大学出版部、2020年)
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