本研究は19世紀アメリカ文学におけるミンストレル的表象と、同時期にアメリカ海軍がアフリカ、アジア、ハワイ、南太平洋諸地域で行った艦上劇のミンストレルショーとの間で共通してみられる「嘲笑」と「階級化」のしくみを明らかにする。また、ミンストレルショーの海外輸出とアメリカ文学におけるミンストレル的表象に着目し、「秩序」と「制度」の固定化を急ぐ19世紀中葉のアメリカの文化的特徴を考察するものである。本年度の研究実績は以下のとおりである。1)資料の読み込みと分析 ErskineのJournal of a cruise among the islands of the Western Pacific. With maps and plates、CanneyのAfrica Squadron: The U.S. Navy and the Slave Trade 1842-1861を中心に資料の読み込みと分析を行った 2)講演、発表 ①京都産業大学「ことばの科学研究センター」2023年度研究会講演(6月)②甲南大学での日本英文学会関西支部でのシンポジウム(7月)③立命館大学英米文学会年次大会講演(7月)④多民族研究学会全国大会講演(12月)行った3)出版①『アフリカ巡航者の日誌』(翻訳)②『ロマンスの倫理と語り』(論集)を出版した 4)研究会 ホーソーン作『おじいさんの椅子』の翻訳出版に向けて大野氏(東京海洋大)と髙尾直知氏(中央大)とオンラインによる研究会を進めた 5)フィジー博物館、図書館、文化史跡で調査を実施(8月)。植民地時代の建造物を見学し1838年から 1840年に行われたウィルクスのアメリカ合衆国遠征隊に関する資料を蒐集した。
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