研究課題/領域番号 |
20K00460
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
高村 峰生 関西学院大学, 国際学部, 教授 (90634204)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ディストピア / コロナ / ペスト / ポストトゥルース |
研究実績の概要 |
トランプ政権におけるディストピア受容という、申請時には現政権と文化の関係性を考察するテーマを掲げていたが、2021年よりバイデン政権が誕生し、今後研究を進めていくうえでの視野の変化を実感している。一方で、2020年春より新型コロナウィルス感染症の世界的な流行により、生活様式が一変し、フィクションの中のディストピアが現実のものとしてより身近に感じられるようになった。それは、感染そのものへの世界の集合的な恐怖だけではなく、その対策として国家からなされる行動制限や、国民の間の自粛へ向けた同調圧力なども含まれる。 こうしたなか、それまで10年間、『ユリイカ』という雑誌を中心に発表してきた原稿を一冊にまとめた著作である『接続された身体のメランコリー』を2021年3月に上梓することができた。2020年度の研究時間の大半は、この著作のために既出論文を練り直す作業と、あらたに序文を書く作業に費やされた。序文では、コロナ禍で読み直されていたカミュの『ペスト』とアントナン・アルトーのペストと演劇の関係についての論文を考察の対象としつつ、現代文明における「接触」の問題について議論を行った。 これは当初計画していた、ディストピアについての議論の方向性とは全く違うが、一種のディストピア論ともいえる論考を偶然ながら書くことができた。 また、2020年12月に行われた英文学会関西支部の文学における病の表象をテーマとしたシンポジウムに登壇し、キャサリン・アン・ポーターのPale Horse, Pale Riderとトマス・マレンのThe Last Town on Earthにおけるスペイン風邪の表象について考察した。 さらに、同月に行われた表象文化論学会のポストトゥルースをめぐるシンポジウムを主宰し、登壇した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では現代アメリカ文化・文学におけるディストピアを研究の対象としていたが、現在進行形の事態であるコロナ禍をめぐる考察に多くの時間が費やされた。当初の研究計画と照らし合わせると進捗は遅れているが、方向性の変化とみるならば、研究はおおむね順調である。 また、海外での学会発表が2020年7月に予定されていたが、それはキャンセルとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後としては、研究計画書に書いたような幅広いスペクトラムを持つ視座にもう一度立ち止まり、現代アメリカ文化におけるディストピアの問題について、考察を深めていきたい。学会発表などは難しい面もあるので、文献調査を中心に研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカのニューメキシコ州で開催予定であった、国際ロレンス学会が中止になり、発表ができなかったことにより、旅費がまったくかからなくなった。
この大会は順延されており、来年度以降に発表する権利を持っているので、渡米可能な場合は、そのための旅費として使用する。
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