研究課題/領域番号 |
20K00463
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
青柳 悦子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70195171)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 北アフリカ / マグレブ / アルジェリア / マンガ / マンガ創作 / 市民運動 / 社会変革 / 異文化交流 |
研究実績の概要 |
自由化と市民社会の構築の進展について注視される世界の地域の中の一つである北アフリカ(マグレブ地域)における表現活動、とくにマンガおよび文学創作と社会変革との関係を探ることがこの研究の指針であるが、開始年度の2020年度からCovid-19の影響にのみこまれ、思うように研究活動を展開することができなかった。しかし3年目の2022年度に、ようやく現地アルジェリアに研究出張することができ、資料・情報収集、現地の関係者との連携強化、また現地への貢献を果たすことができた。 本年度の研究活動実績として特筆すべきは、これまでの研究の蓄積が認められ、第14回アルジェ国際漫画フェスティバル(通称FIBDA)に招待者として参加することができたことである。本年初めて日本がこのフェスティバルの「主賓国」と位置づけられたのも、現地の関係者と本研究代表者との緊密な連携の成果であると自負している。大会への参加にあたっては企画段階から関わり、1件の単独講演のほか、共同講演(1件)、ワークショップ協力(1件)、講演通訳(1件)などを行い、かねて関心の的であったこのフェスティバルの実際を体験するとともに、多くの創作家および関連研究者と直接的な交流関係を開始することができた。現地のテレビ番組(国営放送、主要民間放送)への生出演2つのほか、TV・ラジオ・新聞等多くの報道メディアからも取材を受けた。研究を通じて現地の文化進展に貢献するという本課題の目的に沿った活動を果たせた意義は大きい。 研究成果の公刊としては、日本カミュ研究会発行の学会誌(全頁フランス語)に、仏植民地下のアルジェリア社会とカミュおよびカミュ文学の関係に焦点を当てた論文を掲載したほか、アルジェリアにおける日本式マンガ創作と市民社会構築との関係を論じた論文を分担著として準備した(刊行は2023年4月にずれこんだ)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Covid-19の影響により、海外渡航が不可能となったのは無論のこと、大学教員として予想外のさまざまな対応に力を傾注せざるを得ず、採択初年度(2020年度)からほぼ2年間は研究を進展させることがかなり困難であった。しかし、ようやく2022年度から少しずつ通常の研究環境に近づくことができ、渡航準備には大変な手間がかかったものの、2022年9月から2週間の現地での調査・研究活動を展開することができた。 とはいえ、採択から2年以上の困難な状況の影響は大きく、研究の進度は予定より遅れている。2022年度に現地から持ち帰った貴重な資料をもとに、今後研究を進展させたい。また、2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻により世界情勢は大きく一変し、北アフリカ諸国の政治的・経済的・社会的な状況にも新たな要因が加わったので、これも考慮に入れて表現活動との関係を注意深く見ていく必要が生じてきた。
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今後の研究の推進方策 |
北アフリカ諸国における独立後から現在までの漫画の受容と創作の歴史を概観し、各国の特徴的な傾向をつかむ。とりわけアルジェリアにおいて、独立後の新生国家建設と漫画がどのようにかかわっていたのか、またそれが1990年代の内戦状態によって頓挫したことがどのような社会的影響を持ったのかを探ったうえで、2000年代後半からの新たな創作活動の展開の特徴と意義を探る。さらに2020年以降、北アフリカ各地にみられる政治的な硬直への動きと、民衆レベルの表現文化活動との微妙な関係を注視する。 チュニジアでも漫画創作や漫画フェスティバル開催といった運動は継続的におこなわれている。モロッコでは商業的な文化活動が周辺国からやや進んでおり、漫画の部門では風刺イラストのフェスティバルが近年継続的に開催されている。こうした各地の傾向を踏まえ研究の枠を地理的に広げる。 さらに現在では、規模は大きくないもののアニメ映像制作が諸国でおこなわれている。紙媒体での出版が流通などの困難を伴う中、デジタル技術と表現活動との連携の様相にも注意を払っていく。 研究活動としては、すでに築いた現地の創作家や文化人との関係を進展させつつさらにその範囲を広げていく。またアルジェリアに加えて、チュニジアとモロッコにも現地調査に赴くよう機会を選定する。研究の成果を日本マンガ学会などでの口頭発表や論文投稿のかたちで発信していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外への書籍注文を考えていたが、納品までの日数を確定することがむずかしく、次年度送りとすることで適正な使用ができると考えた。このため3万円弱の予算が年度内未消化となった。継続課題なので次年度の早々に購入手続きをして、研究上必要な書籍を海外から取り寄せる。
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