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2020 年度 実施状況報告書

新約聖書「公同書簡」の文学史的位置づけ:パウロ的キリスト教との関係を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 20K00472
研究機関広島大学

研究代表者

辻 学  広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (50299046)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードヤコブ書簡 / 第一ペトロ書簡 / 偽名書簡 / 文献依存関係
研究実績の概要

本研究計画において取り扱う予定をしている、新約聖書の4書簡のうち、初年度はヤコブ書簡を取り扱う予定にしていた。そこで本年度は、ヤコブ書簡に関する新しい研究文献の渉猟を通して、以前に提示していた私見の再検討を行った。その結果、ヤコブ書簡は、イエスの弟(「主の兄弟」)ヤコブを著者名に用いた偽名書簡であり、原始エルサレム教会の指導者であったヤコブの名前を利用した背景には、パウロ的キリスト教への批判という意図があるという私見自体には修正の必要はとくにないが、同じくエルサレム教会の指導者であるペトロの名を冠した偽名書簡である第一ペトロ書簡との文献的関係については、新たな知見を得た。この両書簡には、共通する文言がしばしば見られるものの、その近親生は共通する口頭伝承をそれぞれが利用しているのであり、両者の間には文献依存関係はないというのが、研究者の多数意見である。しかし、共通する部分をていねいに比較検討してみたところ、これは単に共通する伝承を用いているというだけでは説明が難しく、やはり両者の間に直接の依存関係があると考える方が蓋然性が高い(比較テクスト:第一ペトロ1:6-7/ヤコブ1:2-3、第一ペトロ5:5/ヤコブ4:6、第一ペトロ4:8/ヤコブ5:20)。いずれの文書が先に書かれたかという点については、この依存関係を認める研究者の間でもまだ議論の余地があるが、かたや親パウロ的文書である第一ペトロ書簡と、かたや反パウロ的文書であるヤコブ書簡が、それぞれエルサレム教会の指導者名を冠しつつ創作されているという事実に鑑みても、文献依存関係の想定は十分に可能だと考えられる。なお、研究の途中で、ヤコブが指導者であったエルサレム教会に関する分析も併せて行う必要があるとわかったので、この問題に関する以前の考察を再検討し、論文にまとめた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

期間中の研究については、上記の通り新たな知見を得たが、コロナウィルスによる影響で授業対応等に追われたこともあり、これを論文ないし口頭発表の形で期間内に公表することができなかったので、「やや遅れている」とした。

今後の研究の推進方策

初年度の研究成果については、第2年度に学会発表ないし論文の形で公表する予定である。研究自体はほぼ予定通り進行しているので、第2年度は、当初の計画通り、第一ペトロ書簡の分析に進む。第一ペトロ書簡が、著者として「ペトロ」の名前を冠していながらも、内容的には極めて親パウロ的である背景および動機を精査する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルスの影響により、参加予定であった国内および国際学会が軒並み中止されたことで、予定通りの研究費使用が叶わなくなった。コロナウィルスの状況は予断を許さないが、開催される学会には可能な限り参加して研究発表および資料収集に努めるとともに、比較的高価なため従来入手を躊躇してきた、古代キリスト教に関わる一次資料の購入などを進める計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] From the Baptism of John to the Baptism into the Name of Jesus Christ (Acts 18:24-19:7): Unification of Baptism in Earliest Christianity2021

    • 著者名/発表者名
      TSUJI, Manabu
    • 雑誌名

      Annual of Japanese Biblical Institute

      巻: 46/47 ページ: -

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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