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2022 年度 実施状況報告書

新約聖書「公同書簡」の文学史的位置づけ:パウロ的キリスト教との関係を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 20K00472
研究機関広島大学

研究代表者

辻 学  広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (50299046)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードユダ書簡 / パウロ / 第二ペトロ書簡 / 間テクスト性 / 公同書簡
研究実績の概要

本年度は、本研究課題において分析対象としている新約聖書公同書簡のうち、ユダ書簡と第二ペトロ書簡について、パウロ書簡とどのような間テクスト的関係にあるかを詳細に分析する作業に従事した。
ユダ書簡という短い新約文書をパウロとの関係の中で捉えようとする試みは以前にも存在したが、広く合意を得るには至っていなかった。しかし今回の分析では、パウロの「天使」理解に対する批判がユダ書簡にはあるという、最近の学説に大きな蓋然性があることを確信するに至った。この点についてはもう少し分析が必要だが、2021年度に集中的に分析を試みたヤコブ書簡も、2022年度に取り扱い始めたユダ書簡も、「パウロ批判的」公同書簡という位置付けが可能であることが明らかになった。公同書簡のこのような、パウロ批判と結び付けての分析は、まったく新しい試みではないものの、公同書簡に属する4通の書簡が成立してきた事情をパウロの影響史という文脈の中で捉える理解は、日頃注目されることが少ないこれらの新約文書がもつ重要性を明らかにすることに大きく貢献するものである。
同じくパウロの影響史という視点で第二ペトロ書簡をも理解できることは、第二ペトロ書簡の中にパウロ書簡への言及があるだけに、疑いがない。第二ペトロ書がユダ書を手本としつつ、しかしユダ書簡のパウロ批判的姿勢とはまったく逆の方向を向いていた「親パウロ的」文書として書かれたことは、(やはり親パウロ的である)第一ペトロ書簡に倣って「ペトロ」の名前をこの偽名文書が冠していることをうまく説明する。
つまり、公同書簡はパウロの影響史の中で、反パウロ的流れ(ヤコブ、ユダ)と親パウロ的流れ(ペトロ)を反映しており、その両者の流れが衝突することによってこれらの偽名書簡が生まれてきたのだと推測される。次年度はこの点をさらに詳細に分析して、論証へと進めたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ユダ書簡についての分析は、この書簡がパウロ書簡に対して有している間テクスト的関係を見てとることができるところまでは進んだが、その内容を口頭発表、さらに論文として公開するところまでは辿り着けなかった。また、第二ペトロ書簡についても分析がやや遅れている。

今後の研究の推進方策

次年度は最終年度にあたるので、まずはユダ書簡についての分析を終えて、その成果発表を早い段階で済ませたい。また、第二ペトロ書簡がユダ書簡を下敷きにしつつ、ペトロの名を冠している理由についても、従来の学説を批判的に再検証して、再度論じる。それらを踏まえて、公同書簡全体の成立史をパウロ的キリスト教との関係で捉えるという今回の研究全体のまとめに入る。

次年度使用額が生じた理由

2020年度以降、新型コロナウイルスの影響で国際学会が中止、さらにはオンラインのみで開催されてきたために、国外旅費として計上していた研究費が計画通りに使用できない状態が続いてきたことから、次年度への繰越が続いていた。2022年度も、国際学会は現地参加もできるようになったものの、健康上の不安から現地参加は見合わせざるを得なかったため、従来と同じく国外旅費の使用ができなかった。次年度は、国内学会への参加を増やすとともに、コロナ禍の状況と健康上の問題を見据えつつ、可能であれば国外で開催される学会へも参加し、成果発表や今後の研究の展開についての意見交換を行う計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 誰と誰の和解か?ー聖書的「和解」概念の発展と継承ー2023

    • 著者名/発表者名
      辻 学
    • 学会等名
      「聖書的和解」研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] ヤコブ2:1-13における間テクスト性:パウロ的隣人愛とレビ19章2022

    • 著者名/発表者名
      辻 学
    • 学会等名
      日本聖書学研究所

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公開日: 2023-12-25  

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