研究課題/領域番号 |
20K00482
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
新本 史斉 明治大学, 文学部, 専任教授 (80262088)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 翻訳論 / 越境文学 / 多言語性 / 翻訳比較分析 / コスモポリタニズム |
研究実績の概要 |
2023年10月に、日本独文学会のオンライン叢書153号「絵画、テクスト、テクスチャーーパウル・クレーとローベルト・ヴァルザーをメディア横断的に読む」にドイツ語論文を寄稿し、ローベルト・ヴァルザーの散文テクストにおける身体運動および絵画作品の表象不可能性をめぐるレトリックを論じた。 11月には「文字の文化的実践」をテーマとする国際シンポジウム(明治大学)でドイツ語口頭発表を行い、ドイツ語圏越境作家における脱領土的作法の具体例として、多言語作家イルマ・ラクーザの自伝的作品『もっと、海を』を、翻訳比較分析の手法を用いて分析し、越境文学から生まれうる新たなコスモポリタニズムの可能性について論じた。 同じく11月に、ポーランド語からドイツ語への越境作家、アルトゥール・ベッカーを明治大学に迎え、歴史、思想分野の研究者らとともに領域横断的なシンポジウム「アルトゥール・ベッカーの長編小説『東方への衝迫』を歴史、思想、文学から読み解く」を開催し、司会、口頭発表を行った。その成果は、2024年3月に明治大学文学部紀要『文芸研究』152号に研究論文の形で発表した。 2024年3月に『文芸研究』153号での特集「これからの文学部」に研究報告を寄稿し、「教育現場における外国語教育」-「文学研究における翻訳比較分析」-「国際シンポジウムにおけるドイツ語越境作家との対話」を、機械翻訳支援を積極的に利用しつつ実践するための方法論を論じた。 さらに、越境作家および多言語国家スイスの研究者との国際的対話の実践についての日英両言語による研究報告を、オンライン・ジャーナル Meiji University Asian Studies. vol.5 に寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響を受けて2022年度から今年度へ延期したヨーロッパ研究機関からの研究者招聘は、先方の調整がつかず、実現することができなかった。この状況を受けて、研究プロジェクトの範囲内で計画を調整し、予定していた費用の一部は、翻訳者でもある越境作家アルトゥール・ベッカーの招聘、シンポジウム、講演会開催に充当し、歴史、思想分野の研究者も交えた、国際的、学際的議論の充実をはかった。本年度に使用しなかった残額については、本プロジェクトを一年間延長して、論文執筆のための研究図書の購入等に充てる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に国際シンポジウム「文字の文化的実践」でおこなった口頭発表と議論に基づいて、2024年度には翻訳比較分析とコスモポリタニズム研究を架橋する内容の学術論文をドイツ語で執筆し、日本独文学会の学会誌『ドイツ文学』に寄稿する。 断念したヨーロッパ研究機関からの研究者招聘については、本プロジェクトの内容を発展的に引き継いでいる科研費プロジェクト「もう一つのコスモポリタニズムへー現代ドイツ語圏越境文学における脱領土的思考の展開」(24K03780)において、研究テーマにふさしい形に内容を変更した上で実現をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、2022年度から2023年度へ延期した研究者招聘は、先方の調整がつかず実現することができなかった。予定していた費用の一部は翻訳者でもある越境作家アルトゥール・ベッカーを招聘してのシンポジウム、講演会に充当したが、残額が生じた。 これについては、2023年度に行ったシンポジウムでの口頭発表を発展させ、2024年度に学会誌に研究論文の形で寄稿すべく、研究図書購入費用、印刷、コピー代等に充当する。
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