研究課題/領域番号 |
20K00484
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
田母神 顯二郎 明治大学, 文学部, 専任教授 (30318662)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ピエール・ジャネ / 精神医学 / 心理療法 / ヒステリー研究 / フロイト |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響に伴い、研究の遂行に大きな支障がでた。とりわけ、資料収集を目的とした海外出張が行えず、また研究協力者との連携においても思うに任せない状況が続いた。とはいえ、資料収集に関しては、国内外の電子アーカイヴやオンライン取引などをフルに活用することで、結果的にかなり当初の目標に近い資料収集を達成することができた。また、こうした資料収集を通し、国内外の研究者や研究機関の動向も研究開始以前に比べ、かなりはっきりと掴めるようになった。この情報の蓄積をもとに、2021年度以降、研究協力者の輪を拡げていきたいと考えている。 一方、ピエール・ジャネ関係の資料の分析だけでなく、フロイトの初期理論に関する資料の分析も進めることができたため、両者の理論の発展を時系列的に比較することも可能となるなど、よりいっそう、ジャネ研究の幅が広がったと考える。こうした研究の成果は、「『ヒステリー患者の心の状態』(下)」(『文芸研究』142号、35-61頁)および「ジャネとフロイト、最初の論争」(『文芸研究』143号、73-103頁)という二つの論文にまとめられている。一方、『強迫観念と精神衰弱』を中心とする中期のジャネ理論の考察を通し、ジャネの認知論と記憶論が、ベルクソンの『物質と記憶』に展開されているそれらときわめて深い共通点を有していることが明らかになった。これは以前から指摘されてはいたものの、具体的な分析はほとんどなされてこなかった問題だけに、学術上、きわめて重要なものと考える。またこの研究については、2021年度に発表する予定の論文で、その成果が示せると考える。 本研究の主要目的の一つである、「ジャネの新たな全体像を示す」という点でいえば、初期に関する作業をほぼ終え、中期についての作業に取り組んでいる最中だと言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、2020年度は、コロナ禍のため海外出張や他の研究者との連携という点で支障があったが、資料収集については他の方法でどうにか穴埋めすることができ、またジャネに関する文献資料の考察を推し進めることにより、「ジャネの新たな全体像を示す」というコア部分の作業については順調な進展をつづけていると考えている。その一方、他の研究者との協力体制の構築という点では、やはりコロナ禍のため、思うにまかせぬ部分があったため、今後この点を補強していきたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、これまでの研究を踏まえつつ、ジャネの中期理論から後期理論へと、研究の作業を進める予定である。また他の研究者との協力体制の構築という点では、コロナ禍による遅れがあるが、資料の収集と分析作業を通し、より研究協力者たちのイメージが具体化されてきたため、今後できるかぎり積極的に連絡を取り、当初の計画を進めていくつもりである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、予定していた資料収集を目的とする海外出張が行えなかったため、2021年度に繰り越すことにした。
|