研究課題/領域番号 |
20K00487
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研究機関 | 九州共立大学 |
研究代表者 |
山本 洋一 九州共立大学, 経済学部, 教授 (90268780)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヘルマン・ヘッセ / 少年の日の思い出 / クジャクヤママユ / 改作 / 国語 / 教科書 / 受容 / 新解釈 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により、本来の完了年度を令和4年度から令和5年度に延長したが、当初から予定していた、中学校教育現場での『少年の日の思い出』の作品解釈の実態把握に不可欠な授業参観による調査は、コロナ禍において外部からの来訪者受け入れに慎重な各中学校から許可が得られず実現には至っていない。また、大学生を対象とした、『少年の日の思い出』の読書体験を通した作者ヘッセの認知度等に関するアンケート調査は、これまでに約500名を対象として資料収集ができたが、延長申請が受理されたことで、令和5年度もさらに多くの被験者を対象に継続実施し、その検証結果wo 論文として発表する予定である。しかしながら、当初令和3年度に計画していた最も重要な研究調査としてのドイツにおける《Jugendgedenken》(1931年)とその原点《Nachtpfauenauge》(1911年)の間に存在すると言われる、書籍のかたちで刊行されていない複数の改作の発掘調査については、わが国、ドイツ双方のコロナ禍の影響でこれまで実施できていなかったが、令和5年度に入ってわが国において新型コロナ感染症自体の感染症法上の扱いが変更されるなど、従前とは状況が変化したこともあり、何とか調査を遂行したいと考えている。ちなみに、当研究の一環として、ヘッセ作品のわが国における受容実態分析のための、国立国会図書館及びその他の公共図書館のデータベース検証作業の成果のひとつとして、ヘッセ研究における当該データベースの効果的利用方法及びその利点と問題点などに言及した論文「国立国会図書館のHermann Hesse関連資料と検索における問題点」(Berichte 28号, 日本ヘルマン・ヘッセ友の会/研究会,2023年3月)を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究開始年度と時を同じくして始まった新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により、予定していた研究調査のうちアンケート調査のみが何とか遂行できている状況で、中学校での授業参観及びドイツにおける作品発掘調査のいずれも実施に至っていない。結果的に、本研究の実施期間を1年延長申請し、許可していただいているところである。中学校の国語の授業で学んだ『少年の日の思い出』が「ヘルマン・ヘッセ」の読書体験として認識されているか否かを検証するための、認知度、記憶度に関する大学生対象のアンケート調査については、感染状況の改善時期をとらえて、現時点までに何とか約500名の被験者を対象とした調査は実施できた。同調査は、研究延長が許可された新年度においても、さらに多くのデータを収集すべく継続的に実施する予定である。また、中学校の授業参観を通した同作品の教材としての「読まれ方」についての実態調査についても、これまで中学校からの参観許可が得られてはいない。ただし、本研究の一環として、ヘッセ作品のわが国における受容実態分析のための、国立国会図書館及びその他の公共図書館のデータベース検証作業の成果として、ヘッセ研究における当該データベースの効果的利用方法及びその利点と問題点などに言及した論文「国立国会図書館のHermann Hesse関連資料と検索における問題点」(Berichte 28号, 日本ヘルマン・ヘッセ友の会/研究会,2023年3月)を発表したところである。 また、当初の計画では令和3年度実施予定であった《Das Nachtpfauenauge》から《Jugendgedenken》に至るまでの改作のドイツでの発掘調査については、わが国、ドイツ双方のコロナ禍が、令和4年度に至っても調査遂行が可能な状況とはなっていなかったことから、実施できずにいた。しかし、令和5年度には何とか実施したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
既に言及したように、本研究は大学生へのアンケート調査、中学校の国語の授業参観、《Jugendgedenken》(1931年)とその原点としての《Das Nachtpfauenauge》(1911年)の間に存在すると言われる、書籍のかたちで刊行されていない複数の改作の発掘調査等、各種研究調査を経て成立するものである。 しかしながら、本研究初年度と時を同じくして始まり、いまだ収束の目処の立たない新型コロナウイルス感染症蔓延の影響下で、研究調査遂行が困難な状況が続いていたため、調査手法及び研究順番などを、状況に柔軟に対応させながら研究の遂行を図ってくるとともに、研究期間の1年延長を申請して許可していただいたところである。 幸いにも令和5年度に入ってわが国において新型コロナ感染症自体の感染症法上の扱いが変更されるなど、従前とは状況が変化したこともあり、新年度は何とか調査が遂行できるものと期待している。その上で、まずはドイツにおける上記改作の発掘調査を何としてでも遂行するつもりである。また、中学校の国語授業の参観に関しては、複数の中学校に参観の依頼を重ねてしつつ、やはり令和5年度中の実現を目指している。 既に端緒についたアンケート調査は、さらに被験者を増やして実施し、その概要と結果分析を令和5年度中にまとめ、論文等のかたちで発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度も令和3年度に引き続き、年間を通じた新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により、学会への参加が旅費を要するかたちでは開催されなかったことと、中学校国語の教育現場に赴いての授業参観も実現できなかったこと、さらには当初令和3年度に予定していたドイツでの作品発掘調査も同様の理由で実施に至らなかったことにより、結果として旅費はまったく支出されていない。一方、物品費に関しては、書籍の他は当初予定していなかったものの故障したインクジェットプリンタを購入などに支出したのみにとどまっている。 令和4年度までに、当初予定していた調査の手法や研究の順番等を、状況に柔軟に対応させながら研究遂行を図ってきたものの、とりわけ旅費を支出する本研究の中核としての各種調査が実施できていない。しかし研究期間の1年延長を許可されたことにより、繰越分については、いまだ実施できていない授業参観及びドイツにおける調査研究のための旅費として支出することとする。
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