研究課題/領域番号 |
20K00488
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
中里 まき子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (40455754)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フランス革命 / ロラン夫人 / エレーヌ・ベール / 記憶 / 証言 / 喪のエクリチュール |
研究実績の概要 |
ロラン夫人(1754~1793年)は、ヴォルテールらの啓蒙思想を学び、夫ロラン(ジロンド派内閣の大臣を務めた)とともにフランス革命に身を投じたが、党派間の主導権争いに敗れると投獄され、 断頭台で命を落とした。革命後、フランス共和国の象徴的存在となり、その生涯はミシュレ『フランス革命史』やラマルチーヌ『ジロンド党史』のような著作や、複数の演劇 、絵画、彫塑等の題材となった。2020年度には、ロラン夫人の記憶の継承において決定的な役割を果たした彼女の獄中記を、下記の視点から検討した。 フランス革命の記憶を伝えるテクストの多くは、革命を生き延びた書き手による回想記であるのに対し、ロラン夫人獄中記は、自らの処刑を見据えて書かれたある種の「遺言」である。そこで、このテクストに見られる、自分自身のための「喪のエクリチュール」としての側面を浮き彫りにするため、第二次世界大戦期にユダヤ系フランス人女性エレーヌ・ベール(1921~1945年)が綴った日記と比較した。 その結果、死の恐怖を克服して歴史的現実の証言者であろうという意志や、自らの死が切迫するほどにエクリチュールに専心する姿などが、二人の書き手に共通して見出された。一方、エレーヌ・ベールが本を出版したいと考えるのに対し、ロラン夫人は女性の社会進出に否定的である点で異なっていた。こうした研究の成果を、論考「ロラン夫人獄中記とエレーヌ・ベールの日記:自分の死を見据えて」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関連する書籍を購入し、研究成果を論考として発表することができたが、予定していたフランスでの現地調査や文献収集を実施することができず、次年度以降に延期となったため。
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今後の研究の推進方策 |
ラマルチーヌ『ジロンド党史』(1847年)、ミシュレ『フランス革命史』(1847~1853年)、サント・ブーヴ『新月曜閑談』(1863~1870年)の3点を中心的に取り上げつつ、19世紀フランスにおいてロラン夫人の記憶が継承された状況を具体的に辿る。特に、上記テクストにおけるロラン夫人の表象が、当時の社会情勢や各作家の政治的立場とどのように関わるかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたフランス出張を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度以降、フランスでの現地調査と文献収集を実施する予定である。
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