研究課題/領域番号 |
20K00488
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
中里 まき子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (40455754)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | フランス革命 / ロラン夫人 / 記憶 / ラマルティーヌ / ミシュレ / サント=ブーヴ |
研究実績の概要 |
19世紀フランスにおいて、ロラン夫人の記憶が想起され、継承された状況と背景とを探るべく、ラマルティーヌ『ジロンド党史』(1847年)、ミシュレ『フランス革命史』(1847~1853年)、サント・ブーヴ『新月曜閑談』(1863~1870年)を検討した。とりわけ、ロラン夫人とジロンド党員フランソワ・ビュゾとの道ならぬ恋が1864年に露見したことを踏まえ、その前後に、上記3人の書き手たちがどのようなロラン夫人像を提示したかを精査し、以下の知見を得た。 ラマルティーヌとミシュレは、恋の相手として想定する人物が異なるものの、ロラン夫人を共和国に貢献したヒロインとして理想化している。この人物像には、旧体制への回帰を望む王党派が一定の割合を占め、政治的に不安定なフランス社会において、人々の心を共和国の側に引きつけようとする書き手たちの想いを読み取ることができる。 一方、サント=ブーヴが『新月曜閑談』に発表した文章は、1864年に詳細が露見したばかりのロラン夫人の恋を契機として書かれたものである。そのためサント=ブーヴは、ロラン夫人を革命の立役者や共和国の象徴と捉える以上に、彼女が友人たちやビュゾに宛てた手紙の文学的価値を強調している。また、ロラン夫人の死の場面については、プロスペール・フォジェールが提示したカトリック的解釈を退けた上で、目撃者による証言を引用しつつ独自の解釈を展開する。 こうした研究の成果を「19世紀フランスにおけるロラン夫人像:ラマルティーヌ、ミシュレ、サント=ブーヴ」として学会において発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたフランスでの現地調査や文献収集を実施することはできなかったが、関連する書籍を購入し、研究成果を学会において発表し、有意義な意見交換をすることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの研究から、フランス革命百年後の19世紀末に、革命の記憶を検証する動きが見られたことがわかったため、その時代に書かれたロラン夫人関連の文章を検討する。また、20世紀の出来事の記憶と対比させつつ、革命の記憶の継承における特徴を浮かび上がらせる。 研究協力者であるエリック・ブノワ教授(ボルドー・モンテーニュ大学)と連携して国際シンポジウムを開催し、3年間の研究の成果を発信する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していたフランス出張を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度以降、フランスでの現地調査と文献収集を実施する予定である。
|