研究課題/領域番号 |
20K00490
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大森 雅子 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (90749152)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ソ連文化 / ロシア文学 / 児童雑誌 / 児童文学 / メディア文化 |
研究実績の概要 |
本研究は、ソ連時代の児童雑誌を取り上げ、その中で表象された国内外の「敵」について同時代の成人向けのメディア文化を参照しつつ明らかにすることで、ソ連の児童雑誌における「敵」表象のパラダイムの構築とその再生産のメカニズムの解明を試みることを目的とする。 本年度は、1920年代から40年代半ばまでに刊行されていた児童雑誌に関する資料を収集し、論点を整理した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当初予定していたロシア国内の図書館での資料収集がかなわず、当時の代表的な児童雑誌を現地で閲覧することができなかったが、ロシアで編纂された資料集とインターネットで閲覧可能な雑誌(『ムルズィルカ』『まひわ』『ハリネズミ』『ピオネール』『たき火』『親しい仲間たち』)を活用し、雑誌ごとにそれらの特徴を整理した。その後、同時期の成人向けのメディア文化と比較し、「公式的」な「敵」の異同に関する分析を行った。 この分析を通して明らかになった点は、児童の対象年齢が異なる雑誌ごとに、「敵」の表象が大きく異なっていることである。特に、ロシアにおいて「大祖国戦争」と呼ばれる独ソ戦期(1941-45)の「敵」については、同時期の成人向けの風刺雑誌『鰐』や新聞の言説及び風刺画と比較することで、その異同を検討した。その際、社会主義リアリズムの美学や同時期のソ連の児童文学の批評にも着目して考察を行った。独ソ戦期の児童雑誌に関する研究については、2021年度内の発表を目指して、現在論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当初予定していた現地での調査を行うことができなかった。分析を予定していた児童雑誌は、ロシア国内でしか閲覧できないバックナンバーが多いため、ソ連時代の児童雑誌の全体像を見据えた考察が滞っている。また、2020年度の前半は大学のオンライン授業の準備に追われて研究に十分な時間を割くことができず、当初の計画に沿って研究成果を発表できなかったことが悔やまれる。現在は、インターネット経由で入手できる児童雑誌の分析に取り組みながら、次年度内の研究成果の発表をめざして論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いて、ロシアへの渡航の環境が整い次第、できるだけ早く現地で児童雑誌に関する資料収集を行いたい。それまでの間は、引き続きインターネット経由で閲覧できる資料を用いて、本年度の遅れを取り戻すべく、研究の迅速化を図る予定である。 次年度は、まず、現在執筆中の論文を完成させて、学術雑誌に投稿する。そして、その研究を踏まえて、1950年代以降に刊行された児童雑誌の分析に取り組み、成人向けのメディア文化とも比較検討しながら、研究成果の公表をめざしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、9月と3月に予定していたロシアでの現地調査を断念したため、次年度使用額が生じた。2021年度中にロシアへの出張が可能になれば、現地でソ連の児童雑誌に関する資料収集を行いたい。現地調査が引き続き難しい場合は、書籍の購入費用に充てる予定である。
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