研究課題/領域番号 |
20K00494
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岩津 航 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (60507359)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロマン・ガリ / フォンダーヌ / ユダヤ系作家 |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、海外への渡航が制限されたため、フランスおよびルーマニアにおける現地調査を断念せざるを得ず、研究計画の見直しを余儀なくされた。 ロマン・ガリについては、青春期にあたる1930年代およびナチス占領下の1940年代におけるフランスの状況について、関連書籍を集めて読み込んだ。具体的には、人民戦線政府とスペイン内戦をめぐる共産党系の知識人における平和論を考察し、ガリが寄稿していた『グランゴワール』の右傾化との関連を調べたが、研究を口頭または論文として発表するには至らなかった。ただし、両大戦間のユダヤ系作家(たとえばジャン・リシャール・ブロック)についての研究は深まったので、今後活用できる見込みである。 バンジャマン・フォンダーヌに関しては、2020年9月にフランス語論文を一本脱稿した。イディッシュ語、ルーマニア語、フランス語、スペイン語というフォンダーヌの多言語使用が、どのような文脈において実践されたかについて論じたもので、フランスの出版社から刊行される論集に収録される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で論集の出版が延期され、今年度の刊行は実現しなかった(2021年秋刊行予定)。2021年1月に刊行された『アルケミー』誌第25号に発表した「日本におけるシオラン:翻訳と受容」は、フォンダーヌと同郷で、同じくパリに移住した哲学者シオランの日本における受容を報告したものだが、論中でフォンダーヌのボードレール読解に言及した。なお、『アルケミー』の編集委員から、自身が所属するルーマニアのクルジ大学紀要の客員編集委員を依頼され、受託した。このように、フォンダーヌ研究を通じて、国際的な研究者ネットワークの構築は、コロナ禍においても、着実に進展していると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、フランスおよびルーマニアにおける現地調査を断念せざるを得ず、研究計画の見直しを余儀なくされた。ロマン・ガリについては、関連書籍を集めたものの、実績となる研究を発表するには至らなかった。バンジャマン・フォンダーヌに関しては、『アルケミー』誌に発表した「日本におけるシオラン:翻訳と受容」において言及したのみである。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、新型コロナウイルスの感染拡大状況の見通しが不透明なため、フランスおよびルーマニアにおける実地の文献調査ができないことを念頭に、読解と分析に重点を置いた研究を計画する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、令和2年度は海外渡航が困難な状況が継続した。そのため、フランス国立図書館(パリ)やルーマニア国立図書館(ブカレスト)などで予定していた文献調査のための出張が出来なくなった。また、日本国内の学会等もすべてオンラインに切り替えられたため、国内出張についても旅費を計上することがなくなり、結果的に物品費が支出の大半を占めることとなった。 次年度もコロナウイルス感染拡大が治らない場合は、書籍および映像資料などの購入費を大幅に増やすことを検討する。
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