研究実績の概要 |
2023年春は広島大学、国会図書館、東京都立中央図書館を使って国内で文献調査を行なった。コロナ禍で遅れたドイツ渡航は、円安で費用が高騰し、文献調査の施設と滞在期間を限定することにした。 ヴォルフェンビュッテルの公爵立図書館では最新論文と演劇史や移動劇団、劇作家と俳優の関係に関する文献を渉猟し、古い文献は一部複写、PDF化した。現地の研究者と研究交流をした。ケルン大学演劇文庫では、詳しいドイツ俳優事典、演劇事典等を参照して、『ハンブルク演劇論』で言及がある、レッシングやC.F.ヴァイセと交流をした18世紀の俳優、ノイバー、シェーネマン、コッホ、エクホーフ、アッカーマン、コッツェブー等の活動と受容の広がりを調査した。 帰国後、現地調査の資料を整理し、秋の広島独文学会では、レッシングとヴァイセの『エフェズスの寡婦』における作劇法を比較し、口頭発表をした。この研究を私は論文「二つの『エフェズスの寡婦』―レッシングとC.F.ヴァイセの作劇法」にまとめ、『表現技術研究』第19号に掲載された。また、レッシングとヴァイセの喜劇の代表作におけるお金の役割と博愛精神、策略の手法を比較して、お金は窮地に陥った人を助けるために使われたこと、お金を巡る人間関係に見えざる摂理が働き、ユートピア的博愛精神が見られることを明らかにした。この論文"Geldprobleme, Intrigen und Philanthropie in Lesssings und Weisses Komoedien der spaeten Aufklaerung"は日本独文学会編「第62回ドイツ文化ゼミナール論文集」(2024、編集中)に掲載される。 今回の研究で取り組んだレッシング喜劇のうち『若い学者』(1747)、『女嫌い』(1748)、『ユダヤ人』(1749)を翻訳し終え、2024年度末に出版予定である。
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