研究課題/領域番号 |
20K00501
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
村田 京子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 客員研究員 (60229987)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 19世紀フランス文学 / ジェンダー / モード / 美術 |
研究実績の概要 |
本研究の目的(「19世紀フランス文学とモード、および当時のモードやジェンダー観を反映した美術作品との相関性を、小説構造や小説美学と密接に関連させて分析する」)に基づき、まず、ジョルジュ・サンドの『アンディヤナ』(1832)を取り上げた。女性登場人物(アンディヤナと彼女の分身的存在ヌン)に焦点を当て、服装との関係をジェンダーの視点から探った。その結果、二人の衣装がそれぞれ、身分・職業・気質を表す指標として機能していること、さらに二人の変装は、互いの特質を自らに取り込むためであったことが明らかになった。また、「アマゾン」の着用は、従来の「女らしさ」の範疇を越えた力の発揮をもたらし、女性としての自立を象徴するものであった。 次に、エドモン・ド・ゴンクールの『シェリ』(1884)を取り上げ、女主人公の成長過程を服装を手掛かりに辿った。服装は、シェリの人生の要の時期を語るのに不可欠な要素であると同時に「第二帝政期の社交界の若い娘」の着る衣装として、当時の歴史的・社会的・道徳的側面を反映していた。さらに、服装はシェリの「分身」として機能し、彼女の気質や心的状態を表す鏡ともなっていた。また、モードは「芸術」となり、仕立屋が「芸術家」とみなされるようになったこと、服を着る女性は仕立屋の「芸術家の視線」によって「美術品」と化し、女の肉体のモノ化が生じていることが明らかになった。小説の後半ではシェリ自身が「芸術家」に変貌し、モードの「創造者」になるが、「子どもを産む性」としての女の特徴が露わになった時、その創造性は失われ、女の身体の物質性、獣性がクローズアップされるようになる。そこにゴンクールの女嫌いの思想が見出せる。 上記の研究において、19世紀当時のモード雑誌の図版や、小説の挿絵、当時のモードを反映した絵画などを参照することで、美術と小説の相関性を明らかにすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究計画では、ジョルジュ・サンドの作品に絞って、モードや美術との関連をジェンダーの視点から探る計画であったが、時間に余裕ができたため、次年度に研究予定であった、エドモン・ド・ゴンクールの『シェリ』の研究にも取り組むことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、バルザックの『幻滅』を取り上げ、バルザックの『優雅な生活論』に見出せるエレガンスの概念を参照しながら、パリと地方の服装の対比、およびエレガンスを極めた男性としてのダンディ像を当時のファッション・プレートや絵画などと関連づけながら、ジェンダーの視点から分析していく。また、時間があれば、女性のエレガンスを扱ったバルザックの他の作品も取り上げていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度にパリで開催予定の国際シンポジウムに出席し、口頭発表の予定であったが、コロナ感染拡大のために1年延期となった。また、日本での学会等の旅費を予定していたが、すべて中止またはオンライン開催となり、旅費を使うことがなかった。2021年度は、コロナ感染が収束すれば、学会発表や資料収集のため、渡仏の予定で、その旅費にあてたい。
|