研究課題/領域番号 |
20K00502
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研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
岩本 和久 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (40289715)
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研究分担者 |
中野 幸男 同志社大学, グローバル地域文化学部, 助教 (40640800)
宮川 絹代 札幌大学女子短期大学部, その他部局等, 助教 (40757366)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロシア / ソヴィエト / 非公式文学 / 亡命文学 / 狂気 |
研究実績の概要 |
本研究はソ連の非公式文学における「狂気」の諸相を探り、作家たちの「抵抗」の対象を明らかにしようとするものである。冷戦期の政治イデオロギーとは別の観点から非公式文学を特徴づけること、すなわち、ソ連批判のテクストとしてではなく、近代批判のテクストとしてソヴィエトの非公式芸術を理解することを目指し、さらにソ連後の文学との影響関係をも明らかにしようとしている。 2020年度はアンドレイ・シニャフスキーの作品、特に自伝的な作品『ちびのツォレス』の分析を行い、「ちっぽけな人間」や集団からの疎外といった主題を確認した。 「狂気」の主題はロマン主義以来の伝統でもあるため、時間や空間を超えた世界を志向した19世紀の詩人アファナーシー・フェートが、20世紀の亡命作家イワン・ブーニンに与えた影響についても、両者のテクストを対照させながら検討し、ロシア・ソ連の公式文学とは異なる文学史の流れを明らかにした。 それと同時に、本研究の対象とは対立するものである、公式のソ連文学についても、アレクセイ・N・トルストイ、コンスタンチン・フェージン、ヴィタリー・ビアンキなど、リベラルな志向を保ちつつも、ソ連文学の公式路線と妥協していった作家を通して、プロレタリア文学と反体制文学という二項対立には収めきれない部分を再検討した。 また、ソ連後のロシア文学における「狂気」の主題の現代的展開を考察するために、パーヴェル・ペッペルシテインの短編集『地獄の裏切者』の詳細な分析を行い、反資本主義や反個人主義を見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナ・ウィルスによる外出自粛や図書館の閉鎖、国内、海外双方の移動制限といった事態が相次ぎ、また大学でも準備や運営に時間のかかるリモート授業を実施せねばならず、十分な研究時間の確保も困難となった。そのような状況の中で、当初予定していた海外での資料調査や外国人研究者の招待などを、2021年度以降に持ち越すという判断を行った。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ・ウィルス感染による国内・国外移動の制限は、2021年度には改善されるのではないかと期待されたものの、実際には感染は拡大が続いており、また変異株の流行も始まっている。リモート授業による研究時間の減少という状況も変わっていないため、今年度以降も予定通りに研究を進めることが困難であると予想される。 当面は現在の状況下で可能な国内資料を利用した研究を行うと共に、オンライン会議によるシンポジウム開催などの可能性を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行のために、国内、国外の移動が制限され、海外調査や国内の学会参加などができなかった。2021年度以降の状況改善に期待して持ち越しを行ったが、2021年5月現在も移動の制限が続いているため、海外の文献の購入やオンラインでのシンポジウム開催などへの変更も検討したい。
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