研究課題/領域番号 |
20K00502
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研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
岩本 和久 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (40289715)
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研究分担者 |
中野 幸男 同志社大学, グローバル地域文化学部, 助教 (40640800)
宮川 絹代 東京大学, 総合文化研究科, 学術研究員 (40757366)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロシア / ソヴィエト / 非公式 / 亡命 / 狂気 / 文学 / 映画 |
研究実績の概要 |
本研究はソ連の非公式文学における「狂気」の諸相を探り、作家たちの「抵抗」の対象を明らかにしようとするものである。冷戦期の政治イデオロギーとは別の観点から非公式文学を特徴づけること、すなわち、ソ連批判のテクストとしてではなく、近代批判のテクストとしてソヴィエトの非公式芸術を理解することを目指し、さらにソ連後の文学との影響関係をも明らかにしようとしている。 2021年度の実績だが、岩本和久はアンドレイ・タルコフスキーの作品、特に2作目の『アンドレイ・ルブリョフ』、『鏡』について、ナショナリズムの観点から検討した。 また、タルコフスキーと同時期に活躍していた反体制作家アレクサンドル・ソルジェニーツィンやエドゥアルド・リモーノフについても国家観やナショナリズムについて検討し、その一部を雑誌『エコノミスト』に発表した。 タルコフスキーやソルジェニーツィン、リモーノフの作品は従来、反ソ連、反体制という観点から理解されていたが、これらの考察によって、そのようなリベラルな立場に収めることのできない思想を明らかにし、現代ロシアのナショナリズムの先駆けとしての位置づけを行なった。ソ連後期の非公式芸術と現代ロシアのナショナリズムは決して断絶したものではなく、むしろ非公式芸術を現代ロシア文化の先駆けとして理解することができるのだ。 さらに、現代ロシア文学の作家オリガ・スラヴニコワとパーヴェル・ペッペルシテインについて、スラヴニコワの短編「チェレパーノフの姉妹」とペッペルシテインの長編『カーストの神話生成的愛』について精読し、狂気や民族性への志向を明らかにした。これらの作品については翻訳を行ない、解説を付けて東洋書店新社から発表している。 中野幸男はソ連の非公式作家アンドレイ・シニャフスキーについて、狂気というテーマから分析を行い、論文の形で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は新型コロナの世界的流行のために、当初予定していたロシアにおける現地調査ができず、遅れをきたしていた。2022年度はこの遅れを取り戻すことが期待されたが、今度はロシアとウクライナの戦争が勃発し、やはり日本からロシアへの渡航を控えなければならないこととなった(外務省が渡航中止勧告地域に指定している)。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も戦争状態は続いているため、当初の計画を変更し、ロシアではなく、アメリカや西ヨーロッパ地域での調査を行うこととする。また、ロシア人研究者を日本に招聘することで、情報交換や研究交流を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス、およびウクライナとロシアの戦争開始に伴う渡航制限の結果、研究計画を予定通りに進められなかった。ロシアでの調査に変え、アメリカやヨーロッパでの調査を行う、ロシアから研究者を日本に招聘する、などの計画変更により、2023年度での研究完了を目指す。
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