研究課題/領域番号 |
20K00502
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研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
岩本 和久 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (40289715)
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研究分担者 |
中野 幸男 同志社大学, グローバル地域文化学部, 助教 (40640800)
宮川 絹代 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (40757366)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロシア / ソヴィエト / 非公式 / 亡命 / 狂気 / 文学 / 映画 |
研究実績の概要 |
ソ連後期の非公式芸術における狂気のテーマを再解釈しようとする本研究だが、ロシアとウクライナの戦争のために当初の計画遂行が難しくなったため、文学作品から映画にまで射程を広げ、タルコフスキーの映画における狂気の主題を検討してきた。タルコフスキーの映画には過去のロシア文学や伝統文化やオカルトとのつながり、ソヴィエト後期における不合理な思考が典型的に表れているからである。 2023年度はタルコフスキーの後期作品、特に『ノスタルジア』を分析した。海外における近年の研究成果、特にレフ・ナウーモフ『アンドレイ・タルコフスキーのイタリアのルート』(2022)を参照した上で、イタリアにおける実地調査を行い、この作品のロードムーヴィーとしての構造を明らかにした。具体的にはフィレンツェとローマを拠点として、映画の撮影が行われたサンガルガーノ修道院、温泉地バーニョ・ヴィニョーニ、サン・ヴィットリーノ教会、ローマのカンピドーリオ広場を訪問し、それぞれの場所の特徴、位置関係を明らかにした。その上で、近代以前の美が失われた世界としてのイタリア・イメージ、タルコフスキーと同様にフィレンツェに滞在したドストエフスキーが『白痴』で提唱した「美は世界を救う」という主題を『ノスタルジア』の中に見出し、狂気によって世界を救済するという映画の主題の伝統性、間テクスト性を明らかにした。 また同時にドストエフスキーとイタリア、西欧絵画との関係についても、フィレンツェ市内のドストエフスキーが滞在していた地区で現地調査を行なった。
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