研究課題/領域番号 |
20K00503
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
御園 敬介 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 教授 (60586171)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ポール=ロワイヤル / ラシーヌ |
研究実績の概要 |
本研究は、フランス古典主義時代の知的・文化的・宗教的発信源として大きな影響力を誇ったポール=ロワイヤル修道院の歴史と記憶を辿るものである。令和三年度は計画の二年目であり、引き続きポール=ロワイヤル史の軸線を形作った一連の事象を確認しつつ、その中で修道女たちがいかなる役割を果たしたのかを明らかにする研究に取り組んだ。具体的には、次の二つの作業に多くの時間が費やされた。第一は、修道女たちの動向を伝える資料の収集と分析である。そこでは、ブゾワーニュ、クレマンセ、ギルベールという三名の歴史家がそれぞれ著した三つのポール=ロワイヤル史の読解に加え、『ポール=ロワイヤルの修道女たちの公文書、書簡、報告書集』、『ポール=ロワイヤルの修道女迫害の歴史』、『ポール=ロワイヤルの修道女たちの注目すべき模範的な生涯』といった重要な資料集の調査が行われた。それにより、パリおよび郊外の修道院の構造とその生活実態が明らかになると同時に、ポール=ロワイヤル研究における十八世紀の重要性が確認された(上記の資料はすべて十八世に刊行されたものである)。第二は、昨年度に引き続いてなされたラシーヌ『ポール=ロワイヤル史概要』の翻訳と注解の作成作業である。今年度は、未完に終わった第二部の後半について残されたいくつもの異文、および諸資料の要約とも言える諸々のメモ類を邦訳した。そこには、書かれなかった部分に関するノートも多く含まれており、歴史家ラシーヌの執筆過程とその構想を理解する上で重要な意味をもつと思われる。この作業は次年度以降も継続して行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、ラシーヌ『ポール=ロワイヤル史概要』の翻訳・註解・解説の作成に取り組む一方、ポール=ロワイヤルの隠士たち(Solitaires)の一団に焦点を据えた研究を行う。共同体のもっとも特徴的な面を示すこの男性隠遁者集団については、彼らが運営した教育機関「小さな学校」をはじめ、これまでも一定程度、研究の蓄積が見られるが、そのメンバー構成の詳細や生活の実態をめぐって、整理すべき点はまだ多く残されている。まずは関連する複数の一次資料の批判から始める必要があると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、ラシーヌ『ポール=ロワイヤル史概要』の翻訳・註解・解説の作成に取り組む一方、ポール=ロワイヤルの隠士たち(Solitaires)の一団に焦点を据えた研究を行う。共同体のもっとも特徴的な面を示すこの男性隠遁者集団については、彼らが運営した教育機関「小さな学校」をはじめ、これまでも一定程度、研究の蓄積が見られるが、そのメンバー構成の詳細や生活の実態をめぐって、整理すべき点はまだ多く残されている。まずは関連する複数の一次資料の批判から始める必要があると思われる。
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