本研究の主たる成果は、下の二点に集約できる。一点目は1920年代後半から40年代前半のシュルレアリスムに影響を受けた詩人の詩及び詩論を網羅的に分析し、それらを日本の近現代詩史に位置づけた上で、彼らのシュルレアリスム受容の特性が、理論重視、参照元の複数性、中央集権的でない活動形態などにあり、その独立的で相対的な姿勢が、欧米の紋切り型の日本イメージからの脱却をも促した点。 二点目は日仏の研究者の協力を得ながら、この時期の日本のシュルレアリスム的な美術・文学作品とその分析を、雑誌の特集号や詩の翻訳アンソロジーの出版、講演を通じてフランスで紹介し、その作品群の多様性や現代性を実証できた点である。
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