研究課題/領域番号 |
20K00505
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
時田 郁子 成城大学, 文芸学部, 准教授 (60757657)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自然 / クライスト / ホフマン / メスメリスム / 科学 |
研究実績の概要 |
19世紀初頭のドイツ語圏におけるメスメリスムの受容を、ハインリヒ・フォン・クライストの戯曲『ハイルブロンのケートヒェン』(1810)に探った。 メスメリスムはオーストリアの医師フランツ・アントン・メスマーが提唱し、彼の弟子が展開した治療法を言い、メスマー存命中にパリのアカデミーで偽科学のレッテルを貼られたが、かえってその後ドイツ語圏で受容されている。本研究がメスメリスムに関心を寄せる理由はここにある。 クライストは、メスメリスムに関する知識を得たのちに、『ハイルブロンのケートヒェン』を執筆した。彼は、医師が患者を遠隔操作するメスメリスムの図式を、ヴェッター・フォン・シュトラール伯爵が無意識のうちに町娘ケートヒェンを操り、最後に二人が結婚するという筋に当てはめている。一見大団円に見える結末から、伯爵が領民を操る未来を垣間見せる点に、クライストの意図が隠されていると考えた。 メスメリスム受容は、E.T.A.ホフマンにも顕著なので、比較検討する必要があり、現在、ホフマンにおけるメスメリスムを探っている。 これに平行して、20世紀初頭の生活改善運動に関する資料を調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響で、担当授業の数が倍加し、学内業務も増え、研究に当てられる時間が大幅に減った。また、夏期休暇を利用してドイツの図書館に行き、資料を調査する予定だったが、海外渡航が不可能になったため、資料収集ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
19世紀初頭のドイツの詩人たちにおけるメスメリスムの受容を調査し、彼らが抱いていた自然観を理解するため、初期ロマン派の自然観を考察する。ロマン派に関して先行研究が盛んに行われているので、研究史を踏まえ、メスメリスムを受容する土壌がいかにして生じたのかを考察する。 同時に、20世紀初頭のドイツ語圏の芸術家たちの自然観を、それぞれの作品やエッセイ、芸術家コロニーの展開や芸術運動を通して探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、ドイツ語圏に出張することができず、旅費を使用しなかった。次年度も海外渡航は難しいと考えられるので、旅費はさらに次の年度に回し、パソコン環境の整備と研究に必要な資料の収集に予算を使用する。
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