研究課題/領域番号 |
20K00505
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
時田 郁子 成城大学, 文芸学部, 准教授 (60757657)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自然 / 科学 / ノヴァーリス / ホフマン / ロマン主義 |
研究実績の概要 |
ロマン主義の文学作品の素材がしばしば中世文学やラテン文学に求められることに着目した。 まず、初期ロマン派の詩人ノヴァーリスの魔術観を探った。ノヴァーリスは18世紀半ばに発見された写本に描かれた詩人伝説を題材にして長編小説『ハインリヒ・フォン・オフターディンゲン』(1801)(邦訳『青い花』)を創作した。彼は詩人と魔術師を理想的な一つの存在として描く。詩と魔術の相関関係から伝統的な自然観が浮かびあがることが判明した。そして、18世紀後半に気球の有人飛行が成功したことを知っていたノヴァーリスが魔法の絨毯で空を飛ぶイメージをただの夢物語としていないことを指摘した。 次いで、ホフマンの『黄金の壺』(1814)が、複数の素材-古代ローマのプラウトゥスによる同名の喜劇、ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテの『メルヒェン』(1795)、イタリアのコメディア・デラルテの作家カルロ・ゴッツィの劇『蛇女』(1762)、イギリスのウィリアム・ホガースの版画『真夜中の団欒あるいはパンチ酒の集い』とリヒテンベルクによるホガース版画の注釈-を組み合わせ、変奏して、「新しい時代のメルヒェン」を作った様を分析した。 自然科学者のノヴァーリスと法律官ホフマンといった、合理的思考を持つ人物の作品に、前近代的と言えるプトレマイオス的宇宙像が底流することを指摘し、文学と自然科学を総合しようとするロマン主義文学の傾向を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期ロマン派ノヴァーリスと後期ロマン派ホフマンそれぞれを研究対象にして、ドイツ語圏の各地で時代ごとに異なるロマン主義運動に、プトレマイオス的宇宙像という共通点があることを指摘した点で進展したと言える。 しかしながら、夏期休暇を利用してドイツの図書館に行き、資料を調査する予定だったが、海外渡航が不可能になったため、資料収集と現地調査ができなかった。そのため、20世紀前半の生活改善運動については研究を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ロマン派の詩人にして植物学者アーデルベルト・フォン・シャミッソーと詩人フリードリヒ・ド・ラ・モット・フケー、博物学者アレクサンダー・フンボルトの活動に着目し、19世紀初頭のプロイセンの政治的・文化的状況を踏まえ、ロマン派の自然観を探る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツの図書館で資料調査を行う予定だったが、コロナ禍のため海外渡航が不可能だったため、旅費が余ることになった。
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