研究課題/領域番号 |
20K00507
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
酒井 健 法政大学, 文学部, 教授 (70205706)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バタイユ / 至高性 / 芸術 / メディア |
研究実績の概要 |
2020年度は新型コロナウイルスの感染がまさにパンデミックとなり、当初予定していたフランスに渡っての研究の進捗が図れなかった。だがこの困難な世界情勢の中でも電子媒体を通して、フランスの研究者や図書館から新たな情報や知見を入手し、最大限、研究の推進に心がけた。具体的にはジョルジュ・バタイユ(1897-1962)の第二次世界大戦後の遺作『至高性』を精読し、その成立の歴史的背景とバタイユ個人の問題意識の呼応を精査する一方で、バタイユと同時代の書き手との思想上の関係を研究した。 前者の歴史状況に関しては現代史に関する研究書を読み込むこととバタイユ後期の公刊著作(たとえば『文学と悪』(1957年))の捉え直しを行なった。また後者の同時代作家との関係に関してはとくにピエール・クロソウスキー(1905-2001)に注目して考察を進めた。その成果は2020年11月に刊行となった『クロソウスキーの現在:神学、共同体、イメージ』(水声社)に収められた拙論「神学と芸術をめぐって――バタイユとクロソウスキーにとっての「神的なもの」」にまとめられている。またこの研究書の発行を受けて、2021年5月には研究者の須田永遠氏の主催するシンポジウム「歓待・倒錯・共犯性ーピエール・クロソウスキーの思想をめぐって」に参加し発表「メディアとしてのシミュラークルーバタイユからクロソウスキーへ」を行う予定である。 メディアという視点は前回の科研費研究「ジョルジュ・バタイユの芸術思想と新たな展開-脱近代への提言」で導入され、論文も紀要等に発表されたが、至高性の表現を新たに読み解くために本研究においても積極的に取り入れられており、今後も論文や発表を行っていく予定である。 なお、『至高性』の新訳の作成と刊行に関しては出版社との交渉を終えており、拙訳を随時入稿していくことで了解に達している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渡仏して国際シンポジウムに参加する予定であったが、パンデミックの影響でそれが不可能になり、当初の予定のような研究の進捗はみられなかった。だが日本においてシンポジウムや講演会に積極的に加わり、成果をあげることができた。『至高性』に開示されたバタイユの思想の再把握に関しても、テクストの厳密な読み直しを図って、これを実践し、一定の進捗をみたので、総合的に勘案して上記のような自己評価になった。
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今後の研究の推進方策 |
フランスにおける新型コロナの感染が下火になれば、渡仏して国際シンポジウムに参加する予定であるが、感染がこのまま蔓延するようであれば、日本においてネットや電子媒体を用いて可能な限り研究者と交流を持ち、研究を推進していく覚悟である。具体的には『至高性』の新たな解読の試みと論文執筆、邦訳のさらなる達成、発表の催しへの参加を研究推進の方策とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの影響で渡仏して研究を推進できず、渡航費を次年度に計上せざるをえなくなった。上記の理由がなくなり、渡仏が可能になれば、昨年度分の出張も積極的にこなして、渡航に経費を計上していく予定である。
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