研究課題/領域番号 |
20K00507
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
酒井 健 法政大学, 文学部, 教授 (70205706)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バタイユ / フランス現代思想 / 至高性 / 岡本太郎 / キルケゴール / 実存主義 / ラスコーの壁画 / エロティシズム |
研究実績の概要 |
2023年度の研究実績としてはバタイユの至高性の哲学に関連して三つの発表をおこなったことがあげられる。 一つは2023年4月に大分県立美術館において単独で公開講演を開催し、バタイユの至高性と芸術に関する考え方をわかりやすく紹介し、さらに岡本太郎の芸術に話を展開し、最終的に戦争回避のための芸術論の可能性を提議したことである。講演後には大分市のカモシカ書店において関連のテーマで聴取者と議論を交わして、発表内容の吟味をおこなった。その後、このときの議論をもとに拙稿を作成し、「友愛の様々なる果実ーラスコーの洞窟壁画、ジョルジュ・バタイユの『エロティシズム』、岡本太郎の《愛撫》」と題して法政大学言語・文化センターの紀要『言語と文化』第21号(2024年1月発行)に上梓した。 もう一つの研究実績は、2023年5月に法政大学市ヶ谷キャンパスにて開催された法政哲学会の大会において実存主義に関するシンポジウムに参加し、バタイユはじめフランス現代思想とキルケゴール哲学の関係について発表をおこない、そののち発表原稿を完成させて、法政哲学会の編集部に提出したことである。この拙稿は「フランス現代思想とキルケゴール受容ー生成する関係性」(仮題)の表題で同会の機関紙『法政哲学』の第20号に掲載が予定されている。なお、同号の出版は2025年6月になるとのことである。 三つ目の研究実績として2023年11月に法政大学市ヶ谷キャンパスにて公開シンポジウム「《夜》を描く画家たちー実存の奥底から」を法政大学言語・文化センター主催(法政大学文学部哲学科協賛)で開催し、発表「ラスコーの伝言-ジョルジュ・バタイユから岡本太郎へ」を行って、上記二つの研究実績をさらに深めて聴取者に開示したことである。 総じてバタイユの至高性の芸術的意義をより多くの人に広めた点に研究成果があったと自認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公開の場での発表を三回おこない研究内容を多くの方々に開示できた点がよき進展として評価されると認識している。このなかで発表原稿をすでに上梓できたものが一つ、当該の学会編集部に提出できたものが一つあり、まずまずの研究成果だと自負している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としてはバタイユの『至高性』と関連の深い二人の文学者のテクストをしっかり読み込んで内容を把握し、この関係性の真相を開示していくことに向けられる。さらに思想の問題としてフランス現代思想の共同体の問題へ研究を進展させていきたい。 二人の文学者とはボードレールとカフカである。両者とも『至高性』が構想された戦後のバタイユにおいて重要な位置を占めており、研究を深めることが求められている。至高性の視点からこれを実施していきたい。とくにこれらの文学者に対するサルトルらフランス実存主義の解釈との違いを鮮明に出していきたい。 またバタイユの共同体論を『至高性』とともに考察したジャン=リュック・ナンシーの『無為の共同体』および『否認された共同体』に注目して、現代にまで至る共同体の問題点を摘出し、至高性の視点から検討を進めてみたい。そうして至高性を対象にした本研究の深化をはかりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの影響とウクライナ戦争の影響で国際学会の開催がのきなみ延期あるいは中止されたため、当該年度の使用を見送らざるをえず、次年度に繰り越した。
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