研究課題/領域番号 |
20K00512
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
長谷川 晶子 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (20633291)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シュルレアリスム / ハイチ / ヴードゥー教 / アンドレ・ブルトン / エクトル・イポリット |
研究実績の概要 |
本研究は、ヨーロッパの芸術運動であるシュルレアリスムが、ハイチにおける民間宗教や人々の生活と深く結びついた芸術のあり方にヒントを得て、第二次世界大戦後の活動を発展させたという仮説を証明することである。
そのために、第三年度にあたる2022年度は、これまでに研究がほとんどされていないハイチの画家エクトル・イポリットに関する調査を精力的に進めた。当初、この謎に包まれたヴードゥー教の画家の活動の全体を明らかにするために、ハイチ、アメリカへの実地調査を実施したいと考えていたが、状況が許さなかった。ハイチは2021年の大統領暗殺事件以来、治安が非常に悪化しており、翌年10月から「レベル4 退避勧告」が出されている状況である。そのため、今年度もハイチでの実地調査は諦め、日本で手に入れることのできる書物を中心に、エクトル・イポリットの創作については論文としてまとめているところである。次年度のアメリカとフランスでの調査を終えてから、完成させて発表する予定である。 また、第二次世界大戦後におけるヨーロッパの芸術の潮流における「原始的なもの」「素朴なもの」に関する調査を進めた。特にこの時代、シュルレアリスムとも関係のあった前衛芸術CoBrAにおけるこの関心を明らかにしながら、シュルレアリスム の考えを相対的な視点から再考した。これに関しては「コブラとシュルレアリスム」という題名の論文にまとめた(2023年9月刊行の予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ハイチ、アメリカへの実地調査を実施したいと考えていたが、状況が許さなかった。ハイチは2021年の大統領暗殺事件以来、治安が悪化しており、2022年10月から「レベル4 退避勧告」が出されている状況である。アメリカへは、コロナ禍がだいぶ収まったので、2023年度に渡航し、研究を推進し、遅れを挽回する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2022年度に補助事業期間延長承認申請を行い、許可された。 2023年度には、主に以下の研究を行う予定である。
第一に、アメリカへの実地調査を実施したいと考えている。エクトル・イポリットの創作に関する調査をシカゴの直観的アートとアウトサイダー・アートのためのセンター、ニューヨーク近代美術館(MoMA)および付属図書館、そしてパリのポンピドゥーセンター附属カンディンスキー図書館で行い、この画家の活動の全体を明らかにしたい。この成果は前年度の調査とまとめて論文として発表する予定である。 第二に、ブルトンをはじめとしたシュルレアリストたちの作品において、ヴードゥー教の象徴的な表現の応用が見られるのかを調査することで、ハイチ人芸術家のシュルレアリスム運動に対する影響の射程の確定に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ハイチ、アメリカへの実地調査を実施したいと考えていたが、状況が許さなかった。ハイチは2021年の大統領暗殺事件以来、治安が悪化しており、2022年10月から「レベル4 退避勧告」が出されている状況である。そのため、今年度もハイチでの実地調査は諦める予定である。その代わり、コロナ禍が多少落ち着いたアメリカとフランスへ、実地調査を実施したいと考えている。エクトル・イポリットの創作に関する調査をウィスコンシン州のミルウォーキー美術館および美術館付属研究所、シカゴの直観的アートとアウトサイダー・アートのためのセンター、ニューヨーク近代美術館(MoMA)および付属図書館、そしてパリのポンピドゥーセンター附属図書館カンディンスキー図書館で行い、この画家の活動の全体を明らかにすることに努めたい。
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