19世紀フランスの写実主義文学における「幻」の描出を検討するにあたり、同時代科学の諸言説からの文学言説における影響を分析する。と同時に、客観性・現実性を重視する写実主義文学において「幻」という非科学の領域にかかわる事象が重要な主題となっている点について指摘する。また写実主義文学のみならず、それに先行するロマン主義文学、および後続する自然主義文学および象徴主義文学における作品の「幻」の主題についても射程に入れることにより多角的な視野から問題を扱い、異なる文学潮流における「幻」の描出の比較、それぞれの相違点およびその背後にある思想状況を文献学的に検証した。
|