研究課題/領域番号 |
20K00514
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
Lee HyunJun 小樽商科大学, 言語センター, 准教授 (40708369)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ブロードウェイ史 / Korean Dancer・SAI SHOKI / モダン・ダンス / マーサ・グラハム / 半島の舞姫(映画) / Sunami Soichi / シアトル写真クラブ / オリエント趣味 |
研究実績の概要 |
本年度はCOVID-19により、本来の研究初年度に予定していた崔承喜のアメリカ公演の現地調査を行うことが出来なかった。その詳細な理由は次項で記しているが、コロナウイルス感染症の拡大により、アメリカ現地における資料調査は次年度以降へと変更せざるを得なかった。そこで本年度は急遽、文献調査やアメリカで公開している各機関のアーカイブの調査・解読および資料整理に務めた。その内容は以下の通りである。 (1)主な文献調査はブロードウェイ史をはじめ、アメリカのモダン・ダンスの歴史や当時のダンサーや舞踊評論家が書き残したエッセイ、批評などを中心に文献調査を行った。 (2)アメリカのアーカイブ調査では、NYPL(ニューヨーク公共図書館)の、主にMedia History Digital Libraryをはじめ、Library of Congress(議会図書館)や、THE New York Timesなどのアーカイブの調査を通して、当時崔承喜の関連記事や写真などを調べた。さらに客員研究員として所属していたコロンビア大学のC.V. Starr East Asian Libraryのアーカイブも合わせて調査した。以上のアメリカにおける文献およびアーカイブ調査は、年度別、ジャンル別、テーマ、場所、人物ごとに分類し整理しつつ、続けて内容の解読や分析作業を進めている。初年度の研究成果は、ワクチン接種以降の渡米・渡欧のフィールドワークに生かすつもりである。 別項であるが、急なコロナウイルス感染症の拡大により、アメリカでのサバティカル研修中の研究計画の変更に伴い、新たな研究活動の一環として、小林多喜二の作品を韓国語に翻訳する作業を行った。この成果は、2021年5月に韓国において『日本名作短編選』として「知識を作る知識」出版社から出版される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
サバティカル研修で訪れていたアメリカのNew York市が、COVID-19の大流行により、2020年3月16日突然、都市全体がロックダウンの状況下に置かれてしまった。そのために客員研究員として所属していたColumbia Universityをはじめ、New Yorkの全図書館、全美術館、資料館、ブロードウェイの劇場がすべて閉鎖されてしまったのである。その他にもアメリカ滞在中に予定していたワシントンの国会図書館における資料調査も、2020年8月の帰国間際まで閉鎖されたために、行うことが出来なかった。 このように、本研究計画書の作成中に想像できなかった突然のコロナウイルス感染症の大流行により、サバティカル研修中に予定していた現地調査を、ほぼ中止・変更することになった。それで、急遽ステイホームで可能な文献リストの作成や検討、またインターネット上に公開している各機関のアーカイブ調査へと、研究計画を切り替えた。しかしそれにも関わらず、2020年3月以降のNew York市のコロナウイルス感染率が急増したことによって、変更した研究計画も順調に進めることが非常に困難であった。それは前項で述べたように、文献調査やアーカイブ調査が、インターネットを頼るほかなかったものの、ネットの環境が非常に不安定だったためである。それに突然のパンデミックによる、爆発的な物流の増加や配達の滞り、それに配達品の盗難が多発し、購入文献が予定通りかつ確実に、回収できない状況が続いた。従って非常に制限された環境の中で在外研究を進めるしかなかった。 さらにもう一つの理由は、2020年8月帰国以降、想定外に他大学へと転出が決まったこととなり、応募時に予想していなかった用務や業務が増えたことによる。そのために、アメリカからの帰国、小樽から東京への転出などによって、後期も研究をあまり進めることが出来ない状況が続いた。
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今後の研究の推進方策 |
当初、研究初年度にアメリカを中心に欧米に散在している崔承喜資料を調査する予定であった。しかし、パンデミック下で海外における現地調査の見通しが、2021年度の現在においてもなお難しいと判断し、引き続き2021年度も国内で可能な資料収集を行う予定である。それに加えて、研究計画の変更点として、これまで長い間構想していた崔承喜資料展覧会の実現を念頭に企画を進める予定である。 もう少し詳細すると、2021年度は、以下の二点に絞り研究を進めていく予定である。まず一つ目は、2020年度に行った文献調査やアメリカのメディア・アーカイブ調査を踏まえて、2021年度もさらにアメリカをはじめ、ヨーロッパの文献調査やアーカイブ調査を続ける予定である。また集められた崔承喜資料の分類および解読した資料を精査し、その成果を投稿論文か、所属機関の紀要論文としてまとめる予定である。 二つ目は今後崔承喜アーカイブを作るために、日本国内の資料所蔵家たちと緊密な協議を重ねながら、2022年の春季か夏季頃に(開催時期はコロナウイルス感染症の拡大状況を見守りながら決めることにする)「崔承喜資料展覧会」の実現に向けて所蔵先の選定、展覧会の企画などに取り組むことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、前項でも述べたように、想像外のコロナウイルス感染症の発生に伴い、2020年度の前半は、アメリカでのサバティカル研修中に起こったロックダウンによる研究実行が困難だったためである。日本帰国後の後半は他大学への転出(小樽→東京)による想定外の業務や用務等が急激に増えたことによる。そのために当初の計画からやむを得ず、研究計画を概ね変更したことにより、未使用額が生じた。 繰り越した予算は、2021年度の大量の文献購入費をはじめ、資料の複写費、整理に必要なファイルなどの文具を購入する予定である。また投稿論文の際に必要なネイティブチェック費として使用する予定である。さらに崔承喜資料展覧会の企画に向けて、所蔵先からの資料の貸出費や会場費など、展覧会に必要とする諸費用に充てる予定である。また展覧会の事前準備費用として、宣伝用のパンフレット作成費、複写費、郵送費、人件費に予算を使用する予定である。
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備考 |
本研究計画に沿った研究成果ではないが、昨年度の研究活動の一環として執筆した内容は以下の通りである。 ①李賢晙「『会館芸術』の中の近代舞踊史」『大阪春秋』(通巻No.182、2021年春号)82-83頁。②李賢晙「樋口一葉と朝鮮」『樋口一葉研究会・会報』(第58号、2021年4月20日)4-6頁。③李賢晙の他共訳『日本名作短編選』韓国、知識を作る知識社(2021年5月刊行予定)
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