研究課題/領域番号 |
20K00514
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
Lee HyunJun 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (40708369)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Salle Pleyel / Theatre Chaillot / 東洋の舞姫 / オリエント / Danseuse Coreenne / 戦前昭和期の海外文化外交と植民地文化 |
研究実績の概要 |
今年の研究内容は主にフランスのパリのフィールドワークのための準備や調査対象や場所の下調べ、そして2023年9月4日から18日まで、約2週間にわたる現地調査の実施である。このフィールドワークにおける何よりの成果は、これまで未発表の新資料を多数見つけることが出来たことである。そこで、今回のフランス・フィールドワークについてその意義や目的、そして今回の実績について述べる。 今回のフランス調査の目的は、戦前日本で活躍した朝鮮の舞踊家崔承喜について、朝鮮人であるにもかかわらず、ヨーロッパ公演が実現できたその背景や目的など、当時崔承喜の活動の全様を明らかにするためであった。これまでの先行研究は、ヨーロッパ興行について鄭ビョン浩の『踊る崔承喜』(1995)に依るどころ大きく、それ以降のフィールドワークはほとんど行われてこなかった。今回の調査を通じより浮き彫りになってきたことは、崔承喜のヨーロッパ公演が、フランスのパリに拠点を置き、様々な場所で公演活動を行っていたことである。特にヨーロッパ興行は、Organization Artist International社が担当し、パリ興行を中心にヨーロッパの各地での崔承喜の年間興行計画を建てていたことが明らかになった。ここで崔は「東洋」「オリエント」、「Chosen」の舞姫として紹介され、日仏協会の強力な後援を受けながら、パリにあるサール・プレイエル(Salle Pleyel)公演を皮切りに、ヨーロッパ興行を開始していたのが分かった。日本政府による積極的な海外宣伝、つまり文化外交として崔の名声を利用し、崔承喜の方はそうした中でも自分の芸術に磨きをかけて進化を遂げようと様々な活動を行っていた。即ち、今回のフランスのフィールドワークを通して、その両者が抱く海外舞踊公演の意味合いのズレや思惑が見え隠れしている様子を突き止めることが出来たのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脱コロナ以降、海外渡航にあまり制限がかからなく、フィールドワークの計画や実行が無難に行われた。そのため、現地の図書館や文化施設などにも利用制限、例えば、時間及び利用人数制限やワクチン接種に義務などの既定条件が解かれ、施設によりアクセスしやすくなっているおかげで、見地調査前の準備においても、当地においても問題なく調査することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのフィールドワークで集められた資料を解読・整理したうえ、所属学会で発表や論文投稿を行う予定である。さらにフランス調査は前回できなかった残りの資料をさらに探すために、2024年夏季長期休みを利用し、現地調査を行う予定である。ここでさらに補われた資料は、続けて所属学会や現職大学の紀要などを通して発表していく予定であう。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症による海外フィールドワークが出来なくなり、研究課題の随行に遅延が生じたため。
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備考 |
「朝鮮舞踊鑑賞会」(2024年1月11日武蔵野大学・雪頂講堂)の企画・開催。崔承喜の芸当を受け継いでいる在日舞踊家髙定淳氏をはじめ、日本で活躍している4人の朝鮮舞踊家を招聘し、踊鑑賞会を企画した。在校生250人が参加し、崔承喜や崔承喜の娘安聖姫が創作した演目を披露する舞踊会を鑑賞した。本科学研究費の課題と直接的な関わりはないものの、戦前の崔承喜舞踊の実演を目にした大変意義のある舞台であった。
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