研究課題/領域番号 |
20K00516
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
野平 宗弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (80711803)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ベトナム文学 / ベトナム漢文学 / 燕行文学 / 阮攸 / Nguyen Du |
研究実績の概要 |
新型コロナの影響で海外渡航ができず、1年目に予定していた、河南省および河北省での、阮攸が朝貢の際に通ったと推測される燕行ルートの調査と、北京の第一とう案館での資料調査の実施が不可能であったため、日本国内で可能な研究を進めた。具体的には次のとおりである。 ・ベトナム各王朝の官吏が中国へと朝貢に赴いた際に記した漢詩全般を分析した、 Liam C. Kelley著、Beyond The Bronze Pillars: Envoy Poetry And The Sino-Vietnamese Relationship(2005)中の阮攸に言及した箇所に箇所を確認、訳出、分析し、Liamの考察以外にも、阮攸の漢詩に反映された思想の読解可能性(慧能禅に対する理解、屈原への阮攸の共鳴と現地中国人の無理解への批判)があることを明らかにした。 ・現在手元にある『北行雑録』異本2本の対校を行い、A1494本とVHv1984本との各詩の配列の違いとVHv1984本における詩の取捨選択の理由を考察した。これについてはまだ考察中であるが、その理由が解明されればVHv1984本の編集意図が明らかになり、それにより間接的にA1494本について、より原本に近い一次資料としての価値を保証できるものと考えている。 ・副次的調査研究として、阮攸が書いたとされる字喃作品「十類衆生祭文」に反映された仏教思想と『北行雑録』に反映された仏教思想との異同を考察することで「十類」の作者の再確認と成立時期の推定を行うため、「十類」の異本について調査し、少なくとも3本の異本があることが確認できた。 ・また、阮攸の思想を1960年代に再発見したファム・コン・ティエンがいかに禅思想を受容したのかを考察し論じ、阮攸の禅思想の解釈への手がかりとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナの影響で海外渡航ができず、1年目に予定していた、河南省および河北省での、阮攸が朝貢の際に通ったと推測される燕行ルートの調査と、北京の第一とう案館での資料調査の実施が不可能であったためである。
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今後の研究の推進方策 |
海外渡航が可能になり、中国での現地調査が可能になり次第、1年目で出来なかった河南、河北省での現地調査と北京第一とう案館での資料調査を速やかに行う予定である。 『北行雑録』異本の対校を進めると共に、各詩の日本語訳を進めていく(2021年度は往路で書かれた漢詩のすべての翻訳を目指す)。それと並行して、漢詩の内容および中国の地誌に基づき、阮攸が立ち寄り漢詩を作った地点をより正確に確定させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で海外渡航ができず、1年目に予定していた現地調査が実施できず、そのため旅費の執行ができなかったためである。 現地調査が可能になり次第、現地調査のための費用として執行する予定である。
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