研究課題/領域番号 |
20K00517
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
三原 芳秋 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (10323560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 世俗世界性(worldliness) / 宗教的なるもの / エドワード・W・サイード / 世俗批評 / ポスト世俗 / 『異議申し立てとしての宗教』 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、「エドワード・W・サイードの革新性と限界を(理論的かつ実証的な観点から)正確に見定めることによりその〈遺産〉の核心に迫るとともに、サイードが提唱した「世俗批評」が「ポスト世俗」と呼ばれる現代にこそ(逆説的にも)批評的・思想的に有効な拠点となりうることを実践的に示すことを主眼とする」という目標を掲げている。初年度にあたる本年度は、おもに「実証的」研究に焦点を絞り、コロンビア大学で収集・整理が進んでいるサイード関連の一次資料を調査することが計画されていた。しかしながら、コロナ禍にあって資料を収蔵するButler Libraryが閉鎖され、そもそも渡米がかなわなくなったことから、この方面での研究は実施不可能という状態に陥った。 そのため、必然的に、「理論的」研究に焦点を絞ることとなった。国内の移動困難ならびに各図書館の使用制限といった状況のなかで、こちらの方面でも大きな制約が課せられることとなったが、本研究の主要な源泉となっているゴウリ・ヴィシュワナータン著・三原芳秋編訳『異議申し立てとしての宗教』(みすず書房、2018)が本格的な書評や読書会の対象となったことを機縁として、当該書評にたいしてはリジョインダーを執筆(『南アジア研究』31号に掲載)し、読書会についてはZOOMでゲスト参加しおおいに議論を戦わせることとなった。 これらの活動を通じて本研究の基盤となる理論にかんする思索を深めていくなかで、その現時点での総括的な意味をこめて論文「〈宗教的なるもの〉の異相 -『異議申し立てとしての宗教』補遺」を執筆した。本論文は、岩波書店発行の雑誌『思想』(2021年5月号)に掲載される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度研究計画の中心であったコロンビア大学におけるアーカイヴ調査が実施できなかった以上は、現在までの進捗状況は「遅れている」と評価せざるをえない。他方で、外的制約のなかで理論的な省察に集中することとなった結果、当初予定外であった論文を執筆し世に問う準備が整ったことをもって、「やや遅れている」と自己評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施不可能となったコロンビア大学におけるアーカイヴ調査をなんとしてでも実施することが喫緊の課題であるが、現時点(2021年4月)で状況に改善の兆しは見えていない。しかしながら、現在コロンビア大学英・比較文学科ならびにヘイマン・センターを通じて現在閉鎖中のサイード・コレクションへのアクセスの可能性を模索中である。先行きはまったく不透明だが、もしも調査が可能となれば、今年度中に実施する心づもりである。 理論的研究については、「〈宗教的なるもの〉の異相」をベースとして、オンライン会議等を有効に活用しながら、内外研究者との対話を進め更なる深化を試みる所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた海外出張(米国コロンビア大学)が実施不能となったため。 目下、2021年度中に実施できるか否か先方と交渉中であり、可能となれば繰り越し分をその出張費に充填する計画である。 また、それにともない、現地での資料収集および聴き取り調査、ならびにそれら資料の整理等において人件費・謝金を使用する予定である。
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