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2020 年度 実施状況報告書

近代文学における地球の表象―吉江喬松を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 20K00518
研究機関信州大学

研究代表者

渋谷 豊  信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (70386580)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード吉江喬松 / 日仏比較文学
研究実績の概要

本研究は二十世紀前半の日本の文学において地球とその主たる構成要素(山岳、海洋)がどのように語られ、どのように表象されてきたかを考察するものである。その際、比較文学研究(特に日仏比較)の観点から、学問・文学・芸術の国際化というコンテクストを重視する。事例としては事例研究法をとり、主としてフランス文学に拠りながら文学活動を行った作家・文学研究者の吉江喬松(一八八〇~一九〇四)を取り上げる。本研究の今年度の成果は、主に「吉江喬松のグルノーブル」『信州大学人文科学論集』第8号(第2冊)、2021年3月、p. 143-162 にまとめられている。この論文は、前年度に発表した論文「吉江喬松『アルプス連峯の輝き』詩論」(『信州大学人文科学論集』第7号(第2冊)p. 173-194)の続編に相当するものであり、吉江喬松の山岳に関する代表的エッセーの一つ「アルプス連峯の輝き」の背景を探ったものである。
「アルプス連峰の輝き」の第三部はフランスの地方都市グルノーブルの自然と生活を主題とし、その背景には作者である吉江喬松のグルノーブル滞在経験があると考えられるのだが、その実態はいまだに不明な点が多い。そこで、この論文では吉江喬松のグルノーブル滞在をめぐって実証的な考察を行うこととし、①グルノーブル滞在の時期と理由 ②グルノーブルの「夏期大学」の内実 ③グルノーブルにおけるセルビア文芸との接触の背景 の3点を明らかにした。これによって、吉江喬松による山岳の表象がどのような国際的文化交流の中で生まれたのか、その経緯が明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は吉江喬松を主な研究対象としつつも、この作家を一つの定点として、日仏の近代文学に現れた多様な地球観および地球の表象の諸様態を整理することを目指していた。そのため、フランス国立図書館および東京国会図書館に赴き、資料を収集する計画でいた。ところが、本年度はコロナ禍のためにそれができなかった。従って、研究が順調に進展しているとは言い難い。ただし、吉江喬松という作家の個別研究にやや力点を移し、この作家の作品を改めて精読し、先行研究を批判的に検証した結果、これまで知られていなかった吉江喬松のグルノーブル滞在の実態を浮き彫りにすることができたことは、予想外の成果であった。

今後の研究の推進方策

吉江喬松という作家の個別研究的側面が若干強まるにしても、当初の研究計画を大きく変更する必要はないと考えており、予定通り、日仏比較文学研究の立場から、日本近代文学に現れた地球とその主たる構成要素(山岳、海洋)の表象について広い視野で考察する。そのために、もし状況が許せば東京およびパリに出張して調査を行うが、もしその状況になくとも、オンラインの諸ツールを活用し、幅広い資料収集を試みる。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画ではフランスに出張し、フランス国立図書館で資料収集を行うつもりであった。また、東京の国立国会図書館にも頻繁に赴く予定だった。だが、今年度は新型コロナ感染症の感染拡大により、それが困難であり、そのため旅費を予定通り使用できなかった。以上が次年度使用額が生じた理由である。なお、次年度使用額は令和3年度請求額と併せて、もし状況が許せば旅費として、そうでなければ物品費(主に図書費)として使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 吉江喬松のグルノーブル2021

    • 著者名/発表者名
      渋谷豊
    • 雑誌名

      信州大学人文科学論集

      巻: 8(2) ページ: 143-162

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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