研究課題/領域番号 |
20K00521
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田辺 欧 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻・日本語・日本文化専攻), 教授 (60243276)
|
研究分担者 |
肥後 楽 大阪大学, 21世紀懐徳堂/社会技術共創研究センター, 特任研究員 (30839056)
當野 能之 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (50587855)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 北欧文学 / 社会包摂 / 言語教育 / 異文化理解 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「北欧において文化政策のキータームである「社会包摂」に鑑み、文学の持つ社会包摂的機能に着目し、異文化理解と語学教育との枠組みにおいて考察する」ことである。当初の計画では2021年度は北欧において文学実践者へのインタビューを行い、ワークショップを企画する予定であった。しかしながらこの2年間、活動の範囲は、国内に限られていたため、2年間の研究計画をオンラインで実施できること、そして国内で実施できることに絞って行った。 2021年度は、この研究に関連した前年度の業績を用いて、文学の社会包摂的機能を検証する文理融合型のイベントを2回行った。1回目は量子力学の研究者との協同による一般市民向けのイベントである。自然科学の中においても理解することが困難な量子力学の世界を、デンマークの絵本を検証用例にし、「物語」、「絵本」という文学テクストに落とし込むことを通して、異分野の相互理解がどのようになされるのか、自然科学者側からの解説も交えながらオンラインイベントとして開催した。2回目は小学生向けのイベントである、児童演劇の俳優との協同により子どもに絵本を「読み聞かせ」ることで理解が難しい自然科学への関心を促すこと、そして絵本の発信元のデンマークの世界を伝えることを目的に大学図書館で対面にて実施した。どちらも異分野・異文化と融合を図りながら、文学のアダプテーション機能を検証するアウトリーチ活動となった。 本研究のもう一つの目的である、文学の社会包摂機能を言語教育現場や一般外国語教育の枠組みで検証、考察する作業は、本研究の共同研究者であるスウェーデン語学研究者と行った。講読授業と文学ゼミの授業との協業を通して、実践語学教育、外国語教育の中において文学テクストが異文化理解を促すきっかけとして機能していることを、両者の協業授業実践報告の中で示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度の計画であった「北欧において文学実践者へのインタビューを行い、ワークショップを企画する」ことがコロナ禍状況が継続しており、海外渡航が叶わなかったため。 ただし、国内におけるワークショップを前倒しで実践できたため、計画の変更は行なっているが、全体としての研究の進み具合は今のところ、「やや遅れている」にとどまっている。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度も、未だ完全にコロナ禍は収束しない状態が続いており、さらにロシア・ウクライナ情勢により、北欧への渡航が確定できない状況にあるため、今年度も国内において実施可能な研究計画を前倒しで進めていく。具体的な研究の推進方策は以下のとおりである。
①昨年度の成果を2つの学会において実践報告として発表すると同時に、昨年度の研究交流会(量子絵本の成果発表)をオンラインで行う。 ②フィンランドで実施されるフィンランド・スウェーデン詩人スーデルグランの没後記念事業の下調べを行う。 ③世界情勢次第で海外渡航が可能になった場合は、フィンランド、デンマークでの実地調査を行う(2023年2月―3月ごろに予定)
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度繰越金が生じた理由は国内外におけるコロナ感染状況により、予定していた研究を遂行できず、とりわけ旅費に計上していた予定額を使えなかったため。 今年度も国外への移動の制限によっては予定している研究計画を遂行できない(とりわけ北欧における実態調査や北欧からの研究者招聘)かもしれないが、オンライン上での学会や会議に参加すること、さらには国内で実施可能なワークショップを企画して研究費を有効に使用する予定である。また海外から取り寄せた資料の要約、翻訳、国内でのワークショップに関わる人件費などに助成金を充てる予定である。
|