研究課題/領域番号 |
20K00523
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西槇 偉 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (50305512)
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研究分担者 |
劉 静華 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (50404322)
坂元 昌樹 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (70346972)
屋敷 信晴 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (40404321)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 夏目漱石 / 日本近代文学 / 東アジア / 翻訳 / 受容 / 草枕 / 村上春樹 / 小泉八雲 |
研究実績の概要 |
(1)シンポジウム「夏目漱石と東アジア――翻訳・受容をめぐって」:西槇偉「『草枕』の中国語翻訳史」/申福貞「翻訳と教育現場における漱石文学の受容について」/尹相仁「夏目漱石のなかの東アジア、東アジアのなかの夏目漱石」/司会 坂元昌樹 2020年12月5日 オンライン開催●(2)業績リスト(上記を除く):〔論文〕①坂元昌樹「日本近代文学と他者の表象―村上春樹と夏目漱石」『新薩摩学15』、pp116-132、南方新社、2020年8月/②Soseki and Hearn Studies Vol.2: Lafcadio Hearn in New Orleans and Martinique (Center for Soseki and Hearn Studies , 2021年3月)Echoing Texts: On Feng Zikai and Natsume Soseki and Lafcadio Hearn from a comparative view (pp.57-62, Isamu NISHIMAKI)/Kyushu Spirit as Invented Tradition: On “ With Kyushu Students” (pp.63-67, Masaki SAKAMOTO)③屋敷信晴主編「『太平広記』訳注 ―巻四百二十二「龍」五下―」『国語国文学研究』第52号、熊本大学国語国文学会、2021年3月、9~22頁〔学会発表等〕①西槇「蘇山人の俳句を読む」オンライン国際シンポジウム第1回「中国語圏における俳句の受容をめぐって」(2021年3月6日)②西槇「『草枕』―中国でどのように読まれてきか」(夏目漱石文化振興会(熊本)、2020年12月26日、熊本市民会館大会議室)③坂元昌樹「夏目漱石「倫敦塔」―過去と現在のあいだ」(同上、2020年10月10日)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、2020年度は現地調査を行う予定であったが、コロナ禍により2022年度の計画、中国語訳・コリア語訳をめぐる研究を前倒して実施した。そのため、本研究の全体的な進行は、おおむね順調であるといえる。 まず、シンポジウム「夏目漱石と東アジア――翻訳・受容をめぐって」を開催したことにより、本研究を着実に前進させることができた。本シンポジウムでは、申福貞氏は中国における漱石作品の翻訳状況を概観してから、近年の日本文学翻訳ブームのなかでの漱石作品がどのように翻訳紹介されているか、そして大学教育の現場で学生たちがどのように漱石作品を読んでいるのかについて考察を行なった。西槇の発表では、まず『草枕』所収の俳句・和歌の訳し方に着目し、それから近年の翻訳書の表紙・巻頭挿絵など装幀から窺える作品のイメージを検討し、最後に『草枕』と廃名の小説『橋』の類似性を分析した。尹相仁氏の発表では翻訳の政治性に触れ、漱石研究における批判的視点の重要性を強調された。当日の参加者は40名ほどで、質疑応答も活発に行われ、充実したシンポジウムであった。次に、本研究に関連して、地域のニーズにこたえて、坂元昌樹と西槇が市民講座の講師を務めたことは、研究を社会へ還元するよい機会となった。 また、清末の俳人、羅蘇山人について研究を始めたことは、本研究に新たな展開をもたらすであろう。永井荷風と親交を結び、巌谷小波、尾崎紅葉、正岡子規、高浜虚子など錚々たる明治の文学者の知遇を得て、優れた俳句によって知られた羅蘇山人は、明治の俳人として、一席地を与えられているものの、一般的に知られるとはいえない。西槇はオンライン・シンポジウム(呉衛峰代表 科研費c)で口頭発表を行った。今後共同研究で扱い、論集をまとめることができたらと期待をしている。 以上のように、計画を一部変更したとはいえ、全体的にかなり進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も収束が見えないコロナ禍の影響により、おそらく現地調査を行うのは困難であろう。したがって、現地調査を先延ばしにし、21年度は「漱石文学の影響、受容」に焦点を当てることとする。 とりわけ、近代化、文明開化に対する漱石の考えがどのように受け止められたかに留意し、東アジア地域の近代化プロセスにおける共通点と相違を究明する。具体的には、代表者は豊子愷など近現代中国知識人の漱石受容を担当し、研究分担者劉静華は漱石作品の中国語訳を収集し、翻訳を通しての漱石受容研究を行う。研究分担者坂元昌樹は日本文学における漱石の影響を跡付ける。同じく研究分担者の屋敷信晴は漱石の漢詩文について研究を継続する。韓国における漱石の受容については、研究協力者尹相仁(ソウル大学)に担当していただく。研究成果を研究会などで公表をするほか、年度末には「夏目漱石と東アジアの近代」(仮)をテーマに研究集会をオンラインで開催できればと考えている。 それから、本共同研究に参画するメンバーの所属機関には、漱石・八雲教育研究センターがあり、同センターを母体として小泉八雲に関する研究集会をも計画している。漱石と八雲研究を進めながら、日中比較文学の好素材である羅蘇山人についても、共同で研究を推進するつもりである。 上記計画を遂行しながら、昨年度に口頭発表した論考を論文として公刊することも行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査のための旅費を支出できなかったので、かなり残額が生じた。次年度以降に旅費や成果刊行費として繰越たい。
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