研究課題/領域番号 |
20K00523
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西槇 偉 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (50305512)
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研究分担者 |
劉 静華 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (50404322)
坂元 昌樹 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (70346972)
屋敷 信晴 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (40404321)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 夏目漱石 / 小泉八雲 / 東アジア / 翻訳 / 受容 / 翻案 / 包天笑 |
研究実績の概要 |
(1)研究フォーラム「世界と繋がる漱石とハーン」文学部附属漱石・八雲教育研究センター第4回研究フォーラム、2023年3月27日、熊本大学くすの木会館レセプションルーム/第1部、研究発表①西川盛雄「ハーンによる西洋への俳句紹介と漱石俳句の英訳」、②ケリー・ハンセン「Returning to the Rural:Rethinking the Cultural Landscape of Natsume Soseki's Botchan」、③トビアス・バウアー「漱石作品のドイツ語訳の試み」司会 濱田明/第2部 パネルディスカッション「漱石とハーン:研究の現状」司会 濱田明、パネリスト 坂元昌樹・西槇偉・松岡浩史・福澤清・池田志郎 (2)業績リスト ①西槇「海賊版と剽窃訳―『草枕』の中国語訳について」『一筆啓上 漱石先生』くまもと漱石倶楽部編、弦書房、2022年10月、50~53頁/②同「日中にかける俳句の縁―葛祖蘭と『椿子物語』」『TONGXUE』65号、同学社、2023年3月10日、6~7頁/③同「翻訳再創作的楽趣」『豊子愷訳文手稿:竹取物語;伊勢物語;落窪物語』天津人民出版社、2023年3月、3~4頁/④屋敷信晴「『太平広記』訳注 ―巻四百二十三「龍」七」『国語国文学研究』54号、2023年3月、13頁~37頁/⑤同「唐代『文選』受容の一側面―『文選』と唐代小説の創作をめぐって」『中國學研究論集』第40号 2022年10月、1-13頁 (3)学会発表等 ①西槇「日本と中国における『クオーレ』の翻訳受容―杉谷代水の翻案『学童日誌』と包天笑の再翻案『馨児就学記』を中心に」日本比較文学会全国大会シンポジウム「20世紀前半アジアにおける文化の翻訳」、九州大学、2022年6月5日/②西槇「漱石の俳句を比較文学の視点から読む」くまもと漱石文化振興会、熊本市民会館、2023年1月7日
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は「東アジアにおける漱石文学の影響、受容に照明を当てる」ことを当初に計画していたが、この課題についてはすでに過年度より着手し、20年度にはシンポジウム「夏目漱石と東アジア―翻訳・受容をめぐって」を開催し、21年度には共著『アイラヴ漱石先生』を公刊した。本テーマについて、取り組むべき課題は多く残されているが、本年の大きな研究成果として、日本比較文学会全国大会シンポジウムにおける発表「日本と中国における『クオーレ』の翻訳受容―杉谷代水の翻案『学童日誌』 と包天笑の再翻案『馨児就学記』を中心に」をあげることができよう。 同シンポジウム「20世紀前半アジアにおける文化の翻訳」では、日本、中国、インドネシア、ベトナムの諸地域における翻訳を検討し、20世紀前半アジアにおける文化の状況を検討した。これらの研究成果に加え、アジア諸地域の翻訳研究を広く収める論集を、『アジア遊学』の1冊として公刊すべく、西槇は編集作業を行なっている。論集には、日本近代文学のアジアにおける翻訳や受容に関連する複数の論考を収録する予定である。 また、2021年度に西槇、坂元の共編による『アイラヴ漱石先生』(集広舎、2022年)はその後好評を得て、熊本日日新聞により第44回熊日出版文化賞を授与された(23年2月)。同書をもとにエフエム熊本(FMK)は「アイラヴ漱石先生朗読館」(15分×20回)を企画、放送した(22年10月~23年2月)。さらに、同番組は文章化され、熊本日日新聞デジタル版に連載された。漱石文学を用いて、書籍とラジオ放送、新聞など複合のメディアが共働したことにより、文学研究が社会貢献を果たした一例といえるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度であり、夏目漱石を中心に「植民地」「近代化」「翻訳受容」の視点から論集を編み、公刊するとの計画を当初は立てていたが、21年度にすでに『アイラヴ漱石先生』を公刊しており、ある程度研究成果をその中に収めることができた。そのうえ、2022年度に翻訳に関するシンポジウムの開催により、その研究成果を公表する必要が生じ、本年度の最大の課題として、翻訳に関する論集の編集と公刊を進めていきたい。 それと並行して、計画の中で研究があまり進んでいない領域、つまり「日本近代文学における植民地、近代化」の問題を進めることとしたい。具体的には、夏目漱石『満韓ところどころ』に関する研究を継続し、感染症の流行が収まれば現地調査に出かけるべく、事前に資料の収集や問題点の洗い出しをしておきたい。 可能であれば、本研究の期間を一年間延長し、漱石の満韓旅行をたどり、現地で資料を蒐集したり、実地調査を行ったり、そのうえでテクストの再検討を行いたい。 さらに、「日本近代文学と近代化」の問題については、「夏目漱石の文学と資本主義」のテーマを設定し、漱石作品の中で資本経済に苦しむ近代の民衆の姿を読み取ることにより、近代の資本経済制度が何をもたらしたのか、そうした問題を考えてみたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)感染症の流行が続き、国内外への調査旅行に出かけられなかったため。 (2)最終年度に研究成果を書籍として公刊する費用を残すため
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